染まれ染まれ。 6 ページ7
おそ松の表情は一松の位置からは見えなかった。
トド松は見えてるはず、と素早く見てみると、トド松までもが怯えた表情をしている。その上、目には生理的な涙さえ溜まっていた。
(……な、なんで? 何で二人とも怯えているの?)
訳がわからなくて、一松は汗を浮かべて狼狽する。この状況が訳もなく怖かった。
「うん、ありがとな、チョロ松!」
おそ松は一人楽しそうな声を上げて、男の前に再びしゃがみ込んだ。
何をするでもなく、ただニコニコと笑みを浮かべて自分の前にしゃがみ込んでいる目の前のおそ松に男は警戒した視線を向けていた。
一松もトド松もおそ松が何をしたいのかわからず、ただ見守るばかりだったが、その中でチョロ松だけは諦めた顔でおそ松を見ている。
すると、おそ松の顔から笑顔が消えた。
と、思ったら。
……ドスン、と空気が重くなった。
いきなりいる場所が変わって、重力が変わったかのようにかかった重たすぎる負荷。隕石でもその場に落ちてきたかのような強い衝撃。
喉が苦しくて苦しくて息ができなかった。両手で気道を押し潰されているみたいな、今にも、殺されるんじゃないかと思える、命を握られてる感覚。
足が小刻みにカタカタ震えて立っていられず、座り込んだ。座り込むことですら機嫌を損ねて殺されるんじゃないかという危惧が浮かんできて、ゆっくり、ゆっくり、早く座り込みたいはずなのに、酷く緩慢な動作で座り込むしかなかった。
「っ……ふ……ッッ」
いつの間にか頬を涙が伝っていた。後から後から涙が溢れてくる。視界が霞むのに、手を上げて拭おうとすることすらできない。
(……助けて)
そう言いたいのに、口を開けたら真っ先にその言葉が出てくるはずなのに、出てくるのは意味の無い、言葉の羅列ですらない吃音だった。
圧倒的強者。生物カーストの頂点がここにいる。
ここにいる自分は、どうしようもなく圧倒的弱者で、ただ捕食されるしか能が無いとてもちっぽけな存在で、ただ目の前の死を受け入れるしかない存在なのだと。そう思わされた。
そして、それは紛れもなく真実でしかないのだと思い知らされた。
「はい終わり終わり! もう十分わかっただろうし、それに二人がめちゃめちゃ怯えてるから」
チョロ松がそう言うと、かかっていた負荷がすべて消えた。同時に、今まで真っ黒で見えなかったおそ松の顔が通常通り見えるようになった。
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野口 - 今回のお話は、なんて言うか、さすが兄さんみたいな感じで、かくなるうえは!新星病みこわかわいい! 次回のお話もとても楽しみにしてます! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 読むの遅くなりましたが、今回も最高でした!パーカー松本当に好きで、自分好みの文章を書いてくださるAsterさんに、自分好みのお話を書いていただいて本当に嬉しいです! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» ありがとうございます! 更新が遅くなって申し訳ありません! 今回の話は全然自信が無いです……。時間を見つけてぼちぼち執筆していきますのでよろしくお願いします。 (2017年8月15日 18時) (レス) id: 6f6df49f3d (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新作おめでとうございます! (2017年1月19日 18時) (レス) id: 9a188fa29d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aster | 作成日時:2017年1月13日 22時