【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その２

その５２：そんな言葉知りません ページ7

☆



「──美味しい、美味しいよこのお団子……！」

「ふふ。喜んでいただけたようで嬉しいわ」



イナズマジャパンのベンチには、いつの間にやら幸せそうに団子を貪るほたると、そんなほたるの姿をどことなく微笑ましそうに眺める大人びた雰囲気の少女の姿が一つ。

──彼女の名前は雷門夏未。強化委員として海外に派遣されていた、かつてはマネージャーとして円堂たちと共にFFで優勝を手にした雷門イレブンの一員である。



「……それで、夏未さん。彼らの能力について、よければ聞かせてくれませんか？」

「貴方は？」

「永世学園の基山タツヤです」

「そう」



海外から急遽帰国してきた夏未は、日本では規制されていたオーストラリアの選手の情報も十分に手にしている。彼女はこの試合にとって、大きな鍵となることだろう。



「伝えたいことはたくさんあるけれど……とにかく、今は試合に勝つことを優先しましょう。監督、鬼道くんたちに目を閉じるように伝えてください」

「ほう……いいでしょう。貴方を信じますよ、夏未さん」



夏未からの提案を聞き入れた趙はにやりと妖しく口角を上げながら、イレブンバンドを通して選手たちに「目を閉じて ( ^ ε ^ )」という指示を送った。

今は大変な時だ。言葉の後ろにひっそりと佇む謎の顔文字には誰も触れない……と、思いきや。



「目を閉じて、チュウ……」

「顔文字を読むなッ」

「夏未……帰ってきていたのか」



至って真面目な顔と真面目なトーンで顔文字まで読み上げる鬼道に、灰崎は珍しく呆れたようにツッコミを入れていた。こんなやりとり、団子に夢中のほたるが聞いていたら大爆笑間違いなしである。


相手選手がボールをラインの外へ出したのをタイミングに、イナズマジャパンの選手たちはすぐさまフィールドの隅に集まって鬼道を中心に話を始める。

──その内容は、「目を閉じて耳と気配だけでプレーをしろ」というものだった。



☆



「……やったあっ！！」

「なに！？」



指示の通りに目を閉じてプレーに臨んだ稲森は、見事相手選手からボールを奪うことに成功した。

その一方で、ベンチでは夏未によるオーストラリア代表の解説が行われている。



「オーストラリアの選手が使っている能力は“ヒプノシス”──一種の催眠術よ」

「ヒプノシス？」

「ええ。もっとも、そこにいるお嬢さんはどうやら気づいていたようだけれど」


「「「……えっ」」」



──夏未の視線の先には、まさかの名指しに驚きを隠せていない様子のほたるの姿があった。

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