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「藤原さんッ!!」
彼女の声で我に返った。
未だ私はティーカップを掴めていない。
「ど、どうしたの!?」「大丈夫?!」
彼女は慣れないタメ口で、私を恐怖心と共に見つめてきた。
『大丈夫。なんだろ……店内冷房効いてるし、寒かったからかな……』
私はわざと、寒そうな素振りをしながら笑う。………我ながら下手くそな誤魔化しだ。ある意味笑える。
「ごめんなさい、私、何も考えないで聞いちゃって……」
『何が?どういう意味?』
「何か、藤原さんにとって嫌なことを聞いてしま……聞いちゃったと思って」
『別にそういう訳じゃないよ。寒かっただけって言ってるじゃん』
どんどん私の口調が強くなっていくと共に、空気が冷たくなった。
「お待たせしました。マンゴーパンケーキと三種のベリーパンケーキです」
運ばれてきた甘そうなパンケーキにも、目が行かない。
『ごめん。パンケーキ、食べようよ。』
私は彼女に笑いかけてフォークとナイフを持った。
「そうですね…」
無理して笑った彼女。
その姿に余計胸が痛くなる。
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作者名:チヨ | 作成日時:2019年8月19日 23時