TAKE‐ 土砂降り(続き) ページ10
審神者は部屋で横になっていた。
眠っているわけでも無く、ただぼんやりと雨音を聞いていた。審神者の隣に、普段審神者が着けている面が無造作に佇んでいる。
床に転がっている置時計を見た審神者は、だるそうに上半身を起こして置時計をもとの位置になおした。
「行かなければ」
太陽の光が届かない真っ暗な室内の中、審神者は手燭を持ち出した。白い蝋燭にマッチで火を点けて、マッチを振って火種を消した。途端に焦げ臭いにおいが辺りに立ち込める。
審神者は面を手に取り、緩慢な仕草で顔に固定した。
明るく燃える蝋燭を乗せた手燭を持って、審神者は自室を後にした。
ぺたり、ぺたりと素足で廊下を歩く音が聞こえる。廊下の先から、淡い橙色の光を携えた審神者が歩いてきた。
審神者は物音ひとつしない手入れ部屋の前で、じっと部屋番号を見つめた。
そして、とある一室の戸を叩き、面を付けた顔を寄せて呟いた。
「入るぞ」
返事はない。審神者は音を立てないように戸を開け、中に誰かが居ることを確認してから後ろ手に戸を閉めた。手入れ部屋の床に正座して、審神者は蝋燭の炎を消した。
「傷の具合はどうだ」
第二部隊の中で、たった一人手伝い札の使用を断ったにっかり青江の傷は、まだあと少し癒えていない。にっかり青江は暗闇でも分かるくらいに光る金色の左目を審神者に向けた。
「……心配しなくても大丈夫さ」
口調こそやわらかそうに見えるが、その声は何かを押し殺しているように不機嫌だった。
審神者は抑揚のない声で言う。
「検非違使に遭遇して、辛くも帰還したと聞いた」
「よくやった、とでも言いたいのかい」
二人の会話はいつもとは打って変わって冷ややかだ。他人行儀だ。
「いや、」
審神者の返事は冷たく、にっかり青江の表情は硬い。何かを我慢しているかのように、彼は床を指で叩いていた。
「すまなかった。私が鷹をくくっていなければ傷つくものは出たかっただろう。もしかしたら、誰かが折れていたやもしれん」
「嗚呼、君はそれを何よりも恐れていたんだったね」
にっかり青江の挑発的な言葉に、審神者の体が強張った。膝の上に置かれた審神者の手が、袴の布地をかき集めるように握り締められた。
「君は指揮官として強い存在であろうとしている。けれど、さっきは何もできなかったよねえ」
暗い手入れ部屋の中で布擦れの音がした。審神者の背中がそれと同時に跳ねる。
「怖いんだろう。戦が」
薄暗がりの中で見たにっかり青江に、表情は無かった。
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いなほん(プロフ) - 最゛高゛で゛す゛……!!!!素敵なにっかりさんをどうもありがとうございました！ (2016年12月4日 17時) (
レス) id: eb5ee429dc (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - 拳銃さん» すみません、御指摘ありがとうございます。次のお話で、書き方を変えてみます…。 (2016年9月16日 21時) (レス) id: 873a9a633f (このIDを非表示/違反報告)
拳銃(プロフ) - もう少し間を開けた方が読みやすくなりますよー。はっきり言ってこれ読みにくいですね。二、三行で良いので間隔取ってくださいね(´-ω-`) (2016年9月15日 23時) (レス) id: d214872701 (このIDを非表示/違反報告)
ルサルカ(プロフ) - 新鮮な鉛筆(２B)さん» ありがとうございました！電車の中なのにニヤケちゃいました！www更新のんびり待ってるのでのんびり頑張ってくださーい！応援してますw (2016年9月9日 19時) (レス) id: 2218d295b6 (このIDを非表示/違反報告)
新鮮な鉛筆(２B)(プロフ) - ルサルカさん» 「待つ」ですか、リクエストありがとうございます！また時間が開いたら書かせていただきますね。 (2016年9月4日 8時) (レス) id: 451b47dddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：新鮮な鉛筆(２B) | 作成日時：2016年8月10日 13時
