37幕 窓辺の綺麗な花と寂しそうなウサギ ページ40
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信女side
春雨第七師団戦艦
私、今井信女は初めて異三郎の命令を無視した。初めてこの気持ちに気づき初めて男に恋した。初めて……、自分の意思で彼の元へ行きたい、居たいと思った。
全ては恋を知ったせい。
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私は神威に連れられ彼の自室へと案内された。
彼・神威の部屋は特にものはなく、番傘や取ってある銃弾、あとタンスや書類の山を乗せた机、ベットがあるのみだった。
……いえ、もう一つあった。
花だ。柔らかい花弁を持つ薄ピンク色の綺麗な花。
それは綺麗な花には綺麗な場所にとでも言うように、花の柄が所々に施してある陶器の花瓶にスッと伸びるように窓辺にその花は咲いていた。
私は思わず、
「……綺麗」
気づいたらそう呟いていた。
神威はそんな私の言葉の矛先を探るように私の目線を追った。
そして、「ああ…」と口に出し窓辺に近づいた。
「…この花綺麗でしょ?」
私は彼の言葉にコクッと頷くと神威は少し柔らかく笑った。
それは今まで見たこともない少し懐かしむような、寂しそうな…そんな笑顔だった。
「……貴方が花、大切に育ててるなんて意外ね」
「…昔、好きだった母さんが好きだった花なんだ」
窓辺に映る自分を見つめているのか、それともガラスの外で闇に散りばめられた輝く星々を見ているのか、神威は窓を見つめ遠い目をしていた。
私はなんて言ったらいいか分からなかった。
神威にそんな面もあった事も、過去の事も…。
しばらくの沈黙の後、神威はベッドの方へと向かい腰を下ろした。
「…信女も、こっち来て…?」
神威はどこか寂しそうなウサギのように瞳で私を捉え、そばに来ることを求める。
彼に促されるまま私は神威の隣に腰を下ろす。
そして、
「…っ、か、むい?」
彼はいきなり私を後ろから抱きしめると私の首筋に顔を埋めた。
彼の吐息が首筋にかかり、少し体をよじる。
「…っ、…何して…」
「……聞かないの?昔の俺の事」
それを聞いた瞬間私はピタリとよじるのをやめた。
「…何でそんな事を貴方が聞くの?」
「…だって、普通気になるでしょ?さっきの花が好きな俺の話聞いたら……」
「聞かないって言っても貴方は話す気がする…。だって、…誰かに自分の過去を聞いて欲しいって顔してるもの」
顔だけ振り返った私を見て神威は少し驚いた表情をしていた。そして、口角を上げて悪戯そうな笑みを浮かべて
「そんな事ないヨ?でも、聞かせてあげる。俺の……昔話♬」
38幕 荒地で咲く、綺麗な花(アンタ)を…→←36幕 気に入った雌豚は腕の中
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胡乱 - 読ませていただきました!もうホント最高ですた!d(´▽`)bもともと沖神は好きだったんだけど威信のことよく知らなくて…でもめっちゃ好きなりました!!続編も楽しく読ませてもらいます! (2018年3月30日 12時) (レス) id: eb800c7b82 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い鯰尾君可愛い亀ちゃん大好き!!! - すっごく面白いです!沖神最高ですね!威信も良いし………はぁぁ………最高です。続編も頑張って下さい!直ぐ見に行かせて貰います!応援してます! (2018年2月27日 17時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - nonさん» ありがとうございます!(`・ω・´) 更新私も頑張りますので、nonさんも頑張ってくださいね!応援してやす (2017年8月16日 16時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
non(プロフ) - うぉおぉお!!最っ高でしたー!見させていただきました!凄く良かったですよーー! (2017年8月14日 20時) (レス) id: 0592968b68 (このIDを非表示/違反報告)
チョコマシュマロ(プロフ) - 最高でした! (о´∀`о) (2017年4月8日 8時) (レス) id: 3e9931ebd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン x他3人 | 作成日時:2016年7月28日 22時