【進撃の巨人】拝啓、思い出せない貴方へ

Episode5.シフト ページ6

・




「今日の三時からのシフト、なくしてあげるね」

「え!?」


　シフト表をジッと見つめて、
図書館の受付をせずに仕事をすっぽかしていた私に
モブリットさんは言った。

　今日はエルヴィンに誘われた日。
しかし、今日も仕事があって、
抜け出せる時間帯ではなかった。
それがずっと気になって、
昨日の手紙を見た時から落ち着かないまま、
今に至る。


「でも、急に抜けられないんじゃないですか？」

「大丈夫、大丈夫。
今日から入る新人君を入れたから」


　モブリットさんがこの間、
真剣に書類に目を通していたのを思い出す。
あれは履歴書だったのかと今、気づいた。

しかし、新人がバーコード入力やら、
本の管理やらを初日で出来るのかなど、
色々な不安が浮かぶ。


「でも、新人に受付を任せるって……」

「顔も良いし、覚えも良いから大丈夫だって。
たまには息抜きしてきな！」


　私は不安で仕方がないが、
モブリットさんの｢大丈夫｣は誰よりも説得力がある。
いつもは──いや、本当はその｢大丈夫｣に
甘えずに仕事第一にするのが当たり前なのだが、
今はそれにすがるべきなのかもしれない。

こんなチャンス、もう二度とないかもしれないから。


「たまには、お言葉に甘えても……」

「全然良いよ。気をつけてね」


　手を振るモブリットさんに私も振り返す。

　スキップをしながら
更衣室に向かいたい気持ちを抑え、
私は着替えに向かうのだった。



　

Episode6.カフェ→←Episode4.出会い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す