【進撃の巨人】拝啓、思い出せない貴方へ

Episode26.うっかり ページ27

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｢エルヴィンさん、今後のご予定は？｣

｢特にないから、
ここで借りた本を読もうと思っているよ｣

　昼休憩が終わる五分前。
彼はカバンの中から前回借りた本を取り出し、
いつの間にか持ってきていた四冊ほどの本を
カウンターに置いた。四冊とも全て歴史本で、
高校時代に軽く触れた程度の題名が
図鑑のような厚さで書かれている本だった。
見ているだけで目眩がする。
それも全て外国語。翻訳までしてしまうのか。

｢よく、歴史書見てますね｣

｢社会の先生だからね｣

　彼は仕事の邪魔になるから
そろそろ行くねと言って、
読書用のテーブルに移動してしまった。
邪魔ではないのに、と心で呟きながら、
彼の背中に手を振った。







｢すっかり仲良くなったね、クレアたち｣

｢え、そうですか？｣

　時計の針は三時を指している。
借りる人はほとんどいなくなり、
辺りは本を読んでいる人か
勉強している人だけになっている。

パソコンで大学の課題をしていた私に、
モブリットさんは紙コップと
粒状のチョコレートを二粒くれた。
コップの中にはミルクティーが入っていた。

｢元からあれぐらい積極的でしたよ｣

　初めて会ったときから
ファミレスの店員だと思われていたことから、
積極的だった記憶がある。
店員だと思われていてもいなくても、
お店には誘ってくれていたし、
そこまで変わっているように感じない。

｢クレアもそうだけど、
団長も前より表情豊かになったと思うよ｣

｢そうですか？｣

　話が途切れないようにとか、
この言葉なら彼は喜ぶだろうかとか、
話のことを考えすぎていて、
肝心の彼への反応を見忘れていたようだ。
確かに、よく笑っているなと思った時もあったが。

｢それに、クレアが少し心を
開いてくれるようになったって喜んでいたよ｣

｢えっ｣

　それは初耳だ。
いや、そんなことは本人の私に
言うわけないのだが。
彼に私の思っていることを、
出来る限り打ち明けようと思っていたので、
伝わっていて良かった。

……ん？ なぜ、モブリットさんは、
そんなことを知っているのだろう。

今までモブリットさんとエルヴィンが、
会話をしていたのを見たのは、昼前だけだから──


｢やっぱりチョコレートケーキの話、
していないじゃないですか！｣

｢……いや、チョコレートケーキの話もしたよ？｣

　口が滑った、と両手を口に押さえて
そっぽを向くモブリットさん。

二人が何の話をしていたのか、
朧気な気持ちが再発した私だった。

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