【進撃の巨人】拝啓、思い出せない貴方へ

Episode19.メール ページ20

・




　家に着いたあと、最初にシャワーを浴びた。
都会は自然が少ないのと人口密度のせいか、
蒸し暑く地元と気温が同じでも、
湿度が高いから汗をかいてしまう。
だから、帰って来たら最初にシャワーを浴びて、
その間に冷房をつけて、部屋を冷やしておく。
それが最近の日課だ。

　冷蔵庫から作り置きした麦茶を取り出し、
マグカップに注ぐ。
一口飲めば、シャワーで温められた体温が
すっと下がっていくのを感じた。

　マグカップを机に置き、ソファに腰掛ける。
テレビをつけると、明日の天気が放送されていた。

私が住んでいる場所は最低気温二十九度、
最高気温三十四度。猛暑日に近い真夏日で、
隣町には高温注意報が出ている。
この暑さはあと一週間は続くと予報されていて、
水分補給を怠らないようにと
天気予報士が呼びかけている。


　天気予報を一通り見たあと、
自然と携帯に手が行き、メッセージアプリを開く。
メッセージ欄の一番上にはエルヴィンがいて、
このあとはメールで……と書かれている。
私はエルヴィンのアイコンをタップして、
お気に入り登録をした。

　彼が最初にメールを書いてくれたのだから、
私は返信しなければならない。
頭の中で送りたい内容を必死に考える。

夜分遅く大変失礼致しますは硬いな。
今日はありがとうございましたは
何度も言っているし。
おやすみなさいはメールが終わってしまう。

　ソファに横になって、悶々とする。
私が思いつくのは、硬すぎる態度のメッセージか、
返信しなくても済むような極端なメールばかりだ。
友人ならいくらでも思いつくのに、好きな人(エルヴィン)だから
考え込んでしまう。

モブリットさんになにを送れば良いか
聞いてみようかな。
……あ、電話で慰めてもらっているとき、
エルヴィンに会って勝手に切っちゃったんだった。
気まずいし、また聞くのも虫が良すぎるから、
明日謝ることにして、やめよう。

　インターネットで、
｢好きな人 メール 挨拶｣で検索をしてみる。
なんで元々付き合っていた人間に、
これだけ気を使わなければならないのか。

それは、彼が現在恋人でないのもあるし、
電子化で手紙やメッセージを
書かなくなったこともある。

前世では彼に何ページにも及ぶ恋文を
遠慮なく書けていたが、
現在そんなことをすれば重いの一言だし、
了解のことを｢り｣と表す時代だ。
語彙力が低下するのも、無理ない。

　私は、彼に百文字に満たない短文を送り、
送信ボタンを押した。

Episode20.救いの手→←Episode18.自然

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す