【進撃の巨人】拝啓、思い出せない貴方へ

Episode13.友達追加 ページ14

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｢ミモザを一つ｣

　店中央にある時計の時間は六時半。
お洒落なバーに入る時間にしてはやや早く感じた。
店内は落ち着いた雰囲気の反面、
曲はジャズで、軽やかなリズムを刻んでいる。

カウンター席に腰かけるが、
バーカウンターの椅子の高さが私に合っていなく、
足が宙ぶらりんになる。
エルヴィンは普通に足を地面に付けている。
……流石だ。

｢君はなにを頼む？｣

｢あ、あの、未成年なので……｣

｢ノンアルコールもあるから｣

　常連客なのか、彼が合図をすると
バーテンダーの人も頷いて、ボトルを手にする。
彼がにこりと微笑めば、
隣のボトルを保存してもらうのか、
“エルヴィン”という札がボトルに掛けられた。

｢そう言えば、私が声をかける前
誰かと話していたけれど、聞いても大丈夫かい？｣

　彼はミモザという柑橘系のお酒を煽りながら
私に質問をする。
ふわりと香るオレンジに私は陶酔(とうすい)した。
お酒の匂いだけで酔ってしまうなんて、多分、
私はお酒に弱いのだろう。




｢携帯番号を下さった館長のモブリットさんに。
お礼をしたかったんですよ｣

｢へえ、貰ったときに言えば良かったんじゃ？｣

｢改めて、お礼を言ったんですよ｣

　他の男の名前が出るのが気に食わないのか、
エルヴィンはお酒の方に目線を送った。

折角、行きつけでのお店に女性を連れてきたのに、
他者の男の名が出れば、
誰でも気分は良くないだろう。
言葉をもう少し、考えれば良かったかな。

｢そのあと、エルヴィンさんに
電話をしようと思っていたら、
本人が来て驚きましたよ。
思わず、別れの返事もせずに切っちゃいました｣

　エルヴィンに胸の内を明かす。
驚いたことは嘘でないし、
その場で飛び跳ねようと思ったほどだ。
どれだけ私が感情を抑えて冷静に対応したことか。

｢そうだったのか。それはあとで……ん？｣

　エルヴィンがなにかを言いかけたとき、
私は彼にわざと電話をかけて切った。
彼は着信履歴を見て、電話番号を確認する。

｢それ、私の携帯番号です。
あ、エルヴィンさんを、メッセージアプリで
お友達追加、していいですか？｣

｢ああ、構わないよ。私もさせてもらう｣

　エルヴィンに許可をもらい、友達追加をする。
彼も私を友達追加して、私の携帯に
“エルヴィンが友達に追加されました”
の通知が来た。


私は口元を緩ませながら、
その通知画面をスクリーンショットして、
画像を保存した。

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