【進撃の巨人】拝啓、思い出せない貴方へ

Episode10.作り笑顔 ページ11

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「おはようございまーす！」

「ん？ 今日はなんかテンション高いね、クレア？
昨日団長といいことでもあったの？」

「いえ、エルヴィンが分かってくれないので
勝手にお店から出ていきました」

「えっ」

「新しい本、棚に入れて来ますね！」


　喧嘩をしたのになんであんなに機嫌がいいのかと
モブリットさんは顔に出ている。

　頭の中が整理できていなくて勝手に逃げた。
そのことを考えると、ドラマの見すぎだと思った。

悲劇のヒロインぶったって、シナリオ通りに、
エルヴィンがクタクタになるまで私を探して
逃げた理由を聞く、なんてことはありえない。

エルヴィンは純粋にファミレスの店員だと
間違えただけで泣きだして逃げるって、
なにがどうなってんだ、ってなるに決まっている。
ああ、恥ずかしい。

もう逃げないし、あんな冷たい態度も見せない。
前世の頃みたいに素直で、
自分なりに甘えられるようになりたい。
だから、本当のことを言う。


「ちょ……無理ですって。
本人に許可も取ってませんし」

「……そこをなんとかできないか？」


　受付で誰かがもめている声がする。
聞き覚えのある声。

男性二人が話している声。
一人はモブリットさんとわかった。
もう一人も……知ってる。



　私は作業を止めて、揉めている受付に行く。

　受付の席に座って困っているモブリットさん。
本のバーコード読み込みは、
既に終わっている様子だった。
モブリットさんと揉めている人。
誰でもない、エルヴィンだ。
いつもは来ない時間帯。
時計は十二時を指している。
普段着でないスーツ姿。
携帯を指さして、
モブリットさんになにかを訴えかけている。


「……エルヴィンさん？」

「……っ！」

　私を見た途端、
エルヴィンはカバンの中に急いで本を詰め込んで、
モブリットにお辞儀をした。

「あの、お客様」

「いや……本、ありがとう。また来るよ」

「あっ……」


　エルヴィンは慌てて本を持って、
図書館を出て行った。

私はショックで出口をじっと見つめる。


「あの、クレア」

「…………」

「……クレア？」


　昨日は私が完璧に悪い。
だから嫌われるのも仕方がないと思っていた。
でも、あれはあからさまだ。
──エルヴィンに避けられた。


「……エルヴィン、きっと、
急いでたんでしょうね」


　エルヴィンが出ていった扉の方向を見て、
私は目頭が熱くなるのを感じた。

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