□60話■ ページ30
□Aside■
和也「お前、構ってもらえなくて拗ねてたでしょ？」
A「べ、つに拗ねてない！」
和也「嘘つけ(笑)」
強がってみたけど、
今こうしてあたしのところに来てくれたのが
あたしはどうやら嬉しいらしい。
さっきみたいな、2人には見せない
あたしだけに見せる、意地悪な二宮さん。
和也「だからって皿割るなよなー」
A「すみません…」
あたしも片付けを手伝おうと
手を伸ばしたら、二宮さんの手と重なって
不意に顔を上げると、近距離の二宮さんと目があった。
2人の間に、急に流れる沈黙。
一瞬、だったんだろうけど
数秒見つめあってるような、そんな感覚。
茶色い綺麗な瞳に吸い込まれそうになって
トクンッと心臓の音がした。
気づいたら、二宮さんの顔が近づいて……
.
バッ
A「モガッ」
和也「あっ……ぶねー…」
二宮さんの手で、口が塞がれた。
二宮さんはあたしの口を手でふさぎながら
もう片方の手で、頭を抱えている。
あたしはというと
状況が理解できず、ポカンとしていた。
和也「…お前、逃げろよな…」
A「えっ」
和也「無防備すぎんだよ」
A「え？え？」
和也「はぁー…いいや。俺、皿捨ててくるから、残りの洗い物宜しく」
A「えっ、あ、はい…」
二宮さんはため息をつきながら残りの破片を集めると
それを持って、リビングに戻っていってしまった。
びっ、くりした…
キスされるかと思った…
A「…///」カァー
さっきの情景を思い出して、1人で恥ずかしくなった。
さっきまで何ともなかった心臓が
ドクンドクンと脈を打つ。
キス、しようとしたんだよね？
だって、顔があんなに近くに…
1人でまた思い出して
その場から動けなくなる。
びっくりした、
とにかく、びっくりした。
何が一番びっくりしたかって
少しも嫌だと思わなかった、
自分にびっくりしたんだ。
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作者名：爽歌。
| 作成日時：2017年5月9日 16時
