80その2 ページ48
寛いでウトウトしはじめた伊藤くんの返事を聞いてからサウナへと向かう途中、壁を登って女湯を覗こうとしている三橋に桶を投げ落とす
向こうからは三ちゃんの馬鹿!という赤坂さんの声が響き女子達のキャーキャーと騒ぐ声が小さくなって行った。
「覗きは犯罪だぞ」
「まだ見てねーよ…どこ行くんだ?」
「サウナ、お前もくる?」
「いいなそれ!どっちが長く残れるか勝負しようぜ」
「負けねーぞー」
意気揚々とサウナに入り横に並んでじっと耐える。夜風で冷えた体には丁度良くてじわじわと温まって行く感覚が癖になるのだ。
水分補給してねーからそんなに長く居ようと考えちゃいないが三橋に負けるのは嫌だった、せめてこいつが立ったら出よう
早々に顔を真っ赤になりだした三橋は腕や足を組み直したり、天井を見上げたりと忙しげに動く。暑いとか寒いなんかが苦手そう、というイメージ通りかな?
10分程だったあたりで声をかけると、怠そうに返事を返された
「三橋クン、無理せんと出たらいいのヨ」
「ハッ余裕に決まってんだろ、演技じゃ演技」
大口を開けて笑う三橋は顔どころか全身が真っ赤だというのに、それでも座って耐えてる。
そうまでして勝ちたいのか
「アー俺モウ限界カモナー」
倒れられても困るので聞こえるように態とらしい声を出しながら外に出る。ドアを閉めて2、3歩離れると勢いよくドアがスライドして中から飛び出して来た三橋はそのままスピードを落とさず冷水へと突っ込んで行った
バシャンと水が跳ね、脱衣所へと向かっていた面々に飛沫があたり阿鼻叫喚
冷たい冷たいと叫んだ男達が慌ただしく駆け込んでいく
未だ冷水に浸かる真っ赤な三橋は惚けた顔で壁にもたれかかって居た
「だから無理すんなって言ったじゃん…」
「気持ち悪い」
「逆上せたんだよ馬鹿、ほら肩貸すからおいで」
腕を肩に回して脱衣所へ向かう
途中で伊藤くんと合流したため三橋の着替えを2人で手伝い扇風機の前に座らせる。ついでに自販機で冷たいお茶を買って渡せばあっという間に飲み干してしまった
「もう一杯」
「ばーか、飲まずにこれ首に当てとけよ」
持っていた冷え冷えのペットボトル一本を首筋に当てるとビクッと肩を跳ねさせ瞠目していたが直ぐに目を細めて気持ち良さそうに擦り寄る
そのまま自分でペットボトルを持たせ、ポタポタと雫の垂れる髪をかき混ぜるようにわしゃわしゃと拭く。
「Aー」
「んー?」
「アイス食べたいナー」
「ダメ」
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作成日時:2019年10月4日 23時