８１ ページ49
随分と遅れて自分達の部屋へ戻ると誰かが持ち込んだらしい酒瓶が空になった状態で床に転がっており、上半身裸で踊っている奴や説教垂れる奴、号泣している奴まで揃っていてドンチャン騒ぎだ。
すっかり復活した三橋はそれらを飛び越えてあっという間にテレビの前を陣取り恋愛ドラマから野球へとチャンネルを変えた。
俺は隅の方で静かにしている伊藤くんの隣に腰掛け、このお祭りを傍観する
「誰だヨ酒持ってきた奴」
伊藤くんが帰ってきた時には既に出来上がった佐川が居たらしく、彼も煽られて飲んだらしいとのこと。
その噂の佐川くんは、まだ中身のあるビール瓶を手に持つと三橋とテレビの間にドカッと座り怒り始めた。テレビ鑑賞を邪魔された上に理不尽な─刺身食ったけど─説教に怒った三橋が佐川を蹴りあげ、それに怒った佐川は持っていたビールを三橋へと押しつける
「てめー三橋ぃ…飲め！」
「なんだそりゃいらねーョ！」
酔っ払いのツボはわからない、佐川くんは側で見ていた男子達に辞めとけと静止されるのを無視して悪い顔を浮かべ三橋を煽る
「軟高の三橋さんともあろうお方がよー、酒も飲めねーってのかよ！」
「んだとこのガキァー！」
「佐川くん酒癖悪りぃな」
誘いに乗った三橋がコップを横取り豪快にグビッと飲み干す
「オー伊藤、テメーも飲まんか！」
矛先が伊藤くんに向いたのでコッソリとその場を離れる。他の奴らは佐川が軟高の頭2人に命令しているという物珍しい光景に目を溢しそうなほど開いて注目していた。どんなふうになるのかと
受け取った伊藤くんは匂いを嗅ぎ、ウゲーッと舌を出して分かりやすく嫌悪感を露わにし嫌々と首を振る
「そんなんじゃ女に嫌われるぞ！」
誰かが飛ばした野次にピクッと反応した伊藤くんは酒と佐川を何度見かし、少し悩んでからひと口飲んだ
「むにゃ…」
たったのひと口、それだけで眠ってしまった
暫く時の止まった室内だったが眠る伊藤くんの京ちゃん、という寝言で皆が動き初めた。酔っていない不良達が眠った伊藤くんを布団の上に移動させるのを尻目に俺は周りの奴らに当たっている佐川くんの首へ手刀を当て気絶させた。
ギャグ漫画並みに効いたな
「Aさん、三橋さんどうします？」
お酒を飲んでから俯いたまま動かない三橋、部屋の中央にいる為無視できない。
巻き込まれたくないツッパリくん達からの助けを求める声に背を押され俺が声をかけることになった。
嫌な役回りだ
「三橋ー？おーい？」
パッと顔を上げた三橋はニッコリと笑う
「ハイ！なんでしょーか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年10月4日 23時
