55話 ページ6
※過去回想
貴方サイド
「A、待ってよ。一緒に行こ?」
可愛らしく首を傾げ、問いかけてるのに一緒に行く気満々だった。
僕が断っても勝手に付いてくる未来が想像出来たので、何も言わず頷いた。
凪零は嬉しそうに頬を緩ませ、僕の腕を引いて歩き出した。
普通の女の子なら顔を赤くさせて鼻血を出してるだろう。
自分で言っておきながら現実にそんな事起こるのかと考えてしまった。
でも凪零くらいの美少年ならあり得るかも……
そんな事を考え乍ら歩いていると移動教室に着いた。
席は自由の様で凪零が一緒が良いと言うので後ろの席に座った。
授業を聞くフリをしてスマホを弄る。
ただつまらない教師の話を右から左へと聴き流して行く。
何時もこんな感じで授業を受けている。
一つ欠伸をし早く授業が終わらないかと願う。
遠慮の無い視線が如何しても気になった。
そこまで凪零に惚れているのか。または僕自身が気に喰わないのか。
或いはその両方か。
本当に、実に面倒くさい。何が悲しくて他人の憎悪の対象にされなくてはならないのか。
そうでなくとも栖慈先輩達の事で頭を悩ませていると言うのに。
あの人達への接し方や態度で今後彼らとの関係が決まる。
僕が友好的に接すれば劇が終わった後も関係は切れない。逆に反抗的に接すれば不審がられ金輪際関わって来ない。
反抗的な態度を取るのは簡単だ。けれど他の生徒に迄僕の悪評が知れ渡るのは困る。
成る可く目立たず波風立てない様に学校生活を過ごす僕の計画が泡となる。
だが友好的にすると関係を断つ事が出来なくなる。そればかりか付き纏われるかもしれない。
彰飛先輩なんかモロそういったタイプだ。
そう成らない為には深く関わらず浅い関係を保てば良い。
自然消滅と言った形になるけどその方がマシだ。
そう考え口元に笑みを浮かべた。
放課後、演劇部が活動する第一体育館に訪れた。既に部員は揃っていて視線が集中した。
其れを意識してしまい身体中が強張った。
その事に気付いた栖慈先輩が僕の方へ駆け寄り笑顔を向ける。
「望月。直ぐに練習するから準備して」
先輩の言葉に頷き荷物を床に下ろす。
ステージ上に上がり用意されていた椅子に座り無表情を保ち乍ら遠くを見つめる。
今日は神夜先輩達は来ていない様だった。
まあその方が僕には良いけど。変に緊張しなくて済むし。
栖慈先輩が立ち位置等を確認する。
あの人は舞台監督も務めているらしく部員に色々指示を出していた。
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