54話 ページ5
※過去回想
貴方サイド
「変わり者の転校生……?」
……僕にはその渾名が定着してるのか。
ずっとそう呼ばれるのはちょっとなぁ……
栗色髪の彼は此方まで歩いて来て、僕の顔を覗き込んだ。
「初めてちゃんとあんたの事見るなぁ。あ、俺は涼宮凪零。よろしくね」
ニコリと微笑みを浮かべるその姿は、まるで絵画の人物を思わせた。
それほど、彼の笑顔は素敵だった。
僕が思わず見惚れて居ると、涼宮君を呼ぶ声が聞こえた。
反射的に声のする方へ視線を向けると、桃鵺が涼宮君に手招きしていた。
二人って知り合いだったんだ。
「あーあ、折角話してたのに……」
涼宮君は不満を口にしながらも、僕に手を振った後桃鵺の元へ向かった。
僕はそれを見送って、持っていた荷物を自席に置き、読書を始めた。
徐々に生徒達が登校して来て、教室が賑やかになった。
時折、誰かの無遠慮な視線を感じるが、これには慣れて来たので何時も通り無視をしている。
極力、他人とは関わりたくないから。
本を読む事だけに集中し、周りの雑音を意識からシャットアウトした。
だから、目の前に居る人間に気付くのが遅れた。
他の人間の奇異を見る視線とは違う、優しさを含む視線。
気になって顔を上げると、涼宮君が頬杖を付いて僕を見ていた。
整い過ぎる美貌を間近で見た僕は言葉を失う。
そんな僕を他所に、涼宮君は僕が読んでいた本を覗き込む。
「ねえ、これ何の本?小説?」
「え、あ……ギリシャ神話の小説版。涼宮君、何か用?」
戸惑いながらも彼の問いに答え、逆に問いかけた。
「ん?何も無いけど?あと凪零って呼んでいいよ。俺もAって呼ぶね」
半ば強引だと思ったが、意外にもフレンドリーな人間と感じたので了承した。
「あ、もう直ぐセンコー来るから本閉まった方が良いよ。このクラスの担任って口煩いから」
そう指摘され、お礼を言うと凪零は微笑んで自分の席に戻った。
直後に嫉妬の視線に気付き、また面倒事が増えると分かった。
面倒くさいなぁ、潰しちゃおうかな。目障りな奴ら現れ始めたし。
直接的な攻撃受けたらそうしよ。と考えてる間に、凪零曰くの口煩い先生が教室に入って来た。
先生が来たからか、視線は消えたけど安心出来ないな。
複数の視線だったし。
大方凪零と仲良くしてたのが気に食わない連中だろう。
心が狭い人間達だな。嫌になる。
ぼうっと考え、予鈴が鳴ると同時に教科書と筆記用具を持って移動する。
その後を凪零が追って来た。
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