【短編集】星紡ぎ【あんスタ】

晴天と切符【守沢千秋】 ページ17

＊実際の出来事とは何一つ関係はございません。事実に対しての知識が薄めなので変なところがあっても見逃してください。



空の青い、快晴日。

駅へと向かう小道を歩く、二人の男女。

いい日なはずなのに、彼らの顔は暗く、沈んでいる。



「…いい、天気、ね。」

「…そうだな。こんなに天気がよければ作物も良く育つだろう！喜ばしいことだな。」



男は空元気を見せてはみたが、女はにこりともしなかった。

笑った顔はすぐに崩れて、また元の真剣な顔に戻る。

ぴちゅん、ぴちゅんと、雀が一匹で寂しく鳴いた。



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駅につけば、もう同じ仲間が数人集まっていて、自分はもう抗えないのだと男は理解した。

まだ別れを惜しむ人も多く、二人もそのなかの人だ。

大きく息をついて、目を閉じる。

父母のこと、友人のこと、思い出すことは様々だが、その中で一番割合が高いのは目の前の女のことであった。

そうして、ゆっくりと瞼を開け、女と向き合う。

言いたいことはたくさんこみ上げてきたが、その全てが、喉の奥で何かに引っ掛かり、言葉が出てこない。

そして、やっとのことで出てくる言葉。



「…この子のこと、よろしくな。」



ぽつり、と出た言葉は、彼らしくはないものだった。

女はばっと顔を上げる。

この日、初めて二人は向き合った。

女の瞳は涙に濡れて、はくはくと動かした口からは、嗚咽だけが漏れた。



「…よろしくな、じゃない！貴方も、帰って、くるでしょう！？」

「…あぁ、そうだな。悪いなぁ、こんなことを言って。」



弱気になってはいけないな、と乾いた声で笑った。

本当は、二人ともわかっている。

しかし、そんな考えを振り払うように、男は女の手を取り、目をじっと見つめる。

男の瞳にも、薄く涙の膜が張ってるのを女は気づいた。



「…じゃあ、オレが戻ってくる、ほんの少しの間だけだ。」

「…そう、ね。じゃあ、貴方が帰ってくるまで、私は立派にこの子を育て上げてみせますよ。」

「あぁ、よろしく頼む。…オレが帰ってきたときに、元気な姿が見れれば…。」


言葉は最後まで紡げなかった。

列車が来たことを知らせるベルが鳴り、男はゆるりと女の手を離した。

そしてひとつ、女に向かって微笑むと、では、また。と言って列車の搭乗口に吸い込まれていった。



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片道だけの切符を持って、男は旅立った。


「…お前を愛している。永遠に。」


呟いた言葉は、列車の走行音に紛れて消えた。

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