違和感 ページ44
黒尾「ちょーっと熱くないですか、篠原サン?」
ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべるクロくんにつられて口角が上がる。弧を描く、というより引きつれてる、と言った方が表現的には正しいのだろうが。
『これだけ外が暑ければ少しくらい熱くなると思うよー。
戻らなくて心配かけたみたいでごめんね。迎えにきてくれる人と少し喋ってたら遅くなっちゃった。』
なんでもないみたいにするりと彼の手から逃れて弁明をする。
食堂の方に向かってキッチンのカウンターに入る。少しばかり緩くなったボトルの入った袋を持ち上げて肩にかける。
グッと持ち上げるときに頭に力が入っていたい。気を抜いたら顔をしかめそうだ…
黒尾「持つよ、篠原。
その代わりこの落ちそうなお茶とスポドリ持って?」
さすがは運動部男子と言わざるをえない。ひょいと軽々取り上げられた布袋はもはや重力が作用していないのではないかと混乱しそうなほどだ。…物理は死んだ…
生冷たいペットボトル2本を持って外に出る。
ギラギラと勢いを増してきた太陽は空の下にいるすべてのものを突き刺すかのように鋭い暑さだ。
木兎「あ、篠原!
俺、お茶ちょうだい!」
紙コップを持って待機していたらしい光太郎くんは私を見つけて直ぐに駆けつけてきた。
近くのテーブルにもう一方のボトルを置いてお茶を注いでいれば飲み物がやってきたことを聞きつけた他の人たちに囲まれる。
…自分そんなに背は低くない方だけど、180前後の男子に壁のように囲まれると流石に威圧感を感じるなぁ。
空のペットボトルは空気を抜いてリサイクルの袋に入れて、残りのボトルはクロくんから受け取ってクーラーボックスに入れた。もう少し冷たくなってくれるといいなーと僅かな希望を持って。
赤葦「A、大丈夫?
ご飯取っておいたけど食べれそう?」
流石にもうフードは下ろしたけど、パーカーを着ていることに疑問を抱いたらしい京治くんは紙皿にのったお肉とおにぎりを片手にこちらにやってきた。
まぁ、まだ完全にとはいかないけどだいぶ楽になってきた私はコクリとうなずいた。
『まぁ、でも少し疲れちゃったかな…
みんなすごく優しいし好きだけど、慣れない環境だと』
文末を濁した私に彼はうなずいた。
よしよしと頭を撫でて、とりあえず飲み物とおにぎりを片手ずつ握らせてくれる。
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時