迎え ページ43
もはやガンガンと警戒音のようになってきた頭を抑える。
いつもよりちょっと強い薬を使ったので直ぐ効いてくるはず…
とりあえず光を遮るために鞄に詰め込んだパーカーを頭にかぶせて、スマホの画面の明るさを最小限にした。
トークアプリを開いて上から2番目の”皐月さん”をタップして電話マークを押す。
プルル、プルル…と2、3回コール音がしていつもの冷静な声が聞こえる。
なんだかんだ彼の声を聞くと安心するなぁ…とぼんやりと考えた。
皐月「どうかしましたか?」
『ちょっと頭が痛くて…できれば予定より早めにきてもらう事ってできますか
疲れてきちゃったみたいです。』
やっぱり、と向こう側で小さく聴こえた気がした。
…なんだかお見通しみたいで少し悔しい。そんなに軟弱だと思われていたのか…まぁ、実際反論する余地なくそうなんだけど。
皐月「早くにこちらにきて名産品を買おうと思っていたのが正解のようですね。
もう30分弱でそちらに着きます。
ついたら連絡するのでもうしばらくお待ちください、Aさん。」
ぷつりと切れた通話。
スマホの電源ボタンを押してとりあえず画面を暗くした。
ミンミン、ジリジリとセミが大きな音をたてる。
春には見事な桜が…と真子ちゃんが言っていたので多分教室裏のここに植っているのもそうなのだろう。
ぼんやりと時折スポドリをちびちびと飲みながら過ごしていれば薬が効いてきたのかだいぶ楽になった。
激しく動かなければ大丈夫くらいには落ち着いたのでとりあえずパーカーのフードをかぶって荷物をまとめて5日間寝泊りした教室を出た。
『あれ…クロくん、BBQ抜けてきたの?』
キョロキョロと食堂の前で誰かを探しているようなそぶりを見せる彼を見つけた。
私が声をかけるとほっとしたような表情でこちらに駆け寄ってくる。彼の手には2Lペットボトルのお茶がある。
黒尾「飲み物取りに行ったって聞いたけどずっと戻ってこないし、冷蔵室にもいないしどこに行ったかと…」
冷蔵室に閉じ込められてたら、とかなんらかの問題が発生して…だったらどうしようかと思った。とクロくんは髪をガシガシと乱して、少し頬を赤く染めた。
反応が遅い私を心配して顔を覗く込んだ彼は、ん?と違和感を抱いた、と言いたげな表情をして手をひたいに当てた。
…もしかしなくても、周りから見てわかるほど顔色が悪いのではないだろうか?
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時