. ページ29
.
こんなもの、逃げようと思えば逃げれるだろう。
けれど、全てを射抜くような彼の瞳を前に、私は身動きが取れなかった。
______________________________
_______________
「私が良い年齢になっても余ってたらさ、漣くんが私を貰ってよ」
お風呂から上がり、脱衣所で体を拭いていると、Aちゃんのそんな声が聞こえた。
ジュンくんを揶揄う為の冗談だと、勿論分かっていた。
けれど、彼女からその言葉が出てきた事自体が、嫌で嫌で仕方なかった。
急いで体を拭き、下の衣類だけ身に着けてリビングに行く。
ジュンくんをお見送りしたAちゃんがリビングに戻ってくると、ぼくは何も言わずに彼女に近付いた。
壁に追い込み、彼女の瞳をじっと見つめる。
普段と違うぼくの様子に、戸惑いを隠しきれてないAちゃん。
仕方ないね。ぼくをこんな風にさせたのは、Aちゃんなんだから。
「きみは……どれだけぼくを振り回せば、気が済むんだい？」
こんなにも愛しいきみが、誰かに盗られてしまうのではないのか不安なんだよ。
早く、ぼくを意識して。
そして、ぼくだけを見てほしい。
「あ、あの、日和くん」
「好きだよ、Aちゃん」
関係だなんて、そんなものを気にする余裕なんてなかった。
気付けば、口は彼女への好意を伝えていた。
彼女は、告白を聞いて固まっていたものの、その後俯いてしまった。
……やってしまったかもしれない。
(関係が壊れるのだけはゴメンだね！！)
「Aちゃん……？い、今のは_______________」
「冗談だね！」と言おうとしたけど、顔を上げたAちゃんの顔を見て、言葉を呑み込んだ。
「わ、私。お風呂入ってくる！」
赤く染まった頬。目は合ったものの、すぐに逸らされ伏せ目がちになった彼女の顔。
その顔は、何故か妙に色っぽくぼくの目に写った。
「あんなの……あんな顔するのは、ずるいね」
バクバクと煩い鼓動に蓋をするように、ぼくは心臓の部分をギュゥッと強く手で押さえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しいな(プロフ) - 素敵過ぎてつい一気に読んでしまいました…！続きが気になって仕方がないです！更新いつまでも待ってます！！ (2021年4月25日 11時) (
レス) id: 930a63c2c8 (このIDを非表示/違反報告)
絆 - ぉぉおおおおお……！！！！めっちゃ嬉しいです！！これからどうなっていくのかめっちゃ楽しみにしてます！！ですが無理はせず、お体にお気をつけて更新頑張ってください！！ゆっくりで大丈夫です！！(*' ▽'*) (2020年6月13日 13時) (レス) id: da343c4ed4 (このIDを非表示/違反報告)
アニメ大好き！九喇嘛朱雀♪ - 嬉しいです！！ありがとうございます！！！(^^)これからも無理しない程度によろしくお願いします！ (2020年6月12日 22時) (レス) id: cca3220680 (このIDを非表示/違反報告)
Tsubaki - ついにっ！めっちゃ待ってました！嬉しいです！これからも無理のない程度に頑張ってください！ (2020年6月11日 18時) (レス) id: 301d582cf3 (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - 忙しい中制作お疲れ様です!日和くんルート楽しみにしてました!体調に気をつけて自分のペースで更新頑張ってください！応援してます！ (2020年6月11日 16時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水神友花 | 作成日時：2020年6月11日 13時
