【あんスタ】巴日和に愛されて【巴日和】

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この空間に漂う、何とも言えない気まずい雰囲気。



オレの目の前には、珍しく声を荒らげたA先輩と、彼女の予想外の大声に驚いたおひいさんがいた。



「A先輩っ、落ち着いて下さい！オレは大丈夫ですから……！」



レッスンに集中出来ていなかったおひいさんを、オレの為に怒ってくれたA先輩。



彼女はオレの声掛けで我に返ったらしく、オレの方を向いた。



(_______________えっ)



怒りと悲しさ、そして苦しさが入り交じった複雑な表情。オレが今まで見たことのなかった、A先輩の表情だった。



目の前の彼女になんて声を掛ければ迷っていると、先輩はオレの横を通ると、そのまま何も持たずにドアの方へ早歩きで向かう。



「Aせんぱ」


「ごめんね漣くん。ちょっと頭冷やしてくる」



オレの方を見向きもせず、A先輩はそれだけ言い残してそのままここを出ていってしまった。



……マズいことになってしまった。こんな事は初めてだ。



これは完全におひいさんが悪い。ただの八つ当たりで、A先輩を追い詰めてしまった。



「おひいさん…………聞いてますか、おひいさ__________えっ」



返事をしないおひいさんの方を向くと、彼は体操座りをしたまま、ポロポロと涙を零して泣いていた。



予想外の出来事に思わずギョッとしてしまうも、オレは慌てておひいさんの元へ駆け寄った。



「どうしたんすか、おひいさん」


「Aちゃんにっ……Aちゃんに嫌われたねっ……」



おひいさん自体も、A先輩にここまで怒られるのは初めての事だったのだろう。



自分の行き過ぎた八つ当たりと我儘で、先輩は出ていってしまったし。



おひいさんなりにも、今回は相当責任を感じているんだろう。……いや、A先輩に嫌われたと思っている事が、一番彼の心にきているんだろう。



「おひいさん」


「何だいジュンくんっ」


「一番泣きたいのは、A先輩だと思いますよ」



だからきっと、A先輩はここから出て行ったんだ。








_______________誰にも、自分の泣き顔を見られないように。

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