何があったのだろう ページ25
「…あの、沖田隊長?」
どうしたんですか?と。私はパチパチと瞬きをして彼を見据えながらにそう問い掛けた。この短い時間に。私が彼のことを見ていなかった時間に何があったのだろう。今のは完全に沖田隊長が私に仕掛けていて、私は彼に何もしていないはずだ。なのに彼は何故に自身の顔を両手で覆っているのだろう。顔を覆いたいのは私の方なのだけれど。痛いの痛いの飛んでけをからかわれ、彼の両腕に捕獲され、耳を触られ。そんなことばかり連続していて私の顔はみっともないくらいに赤いだろうから。こんな顔して屯所に帰れないというレベルで赤いだろうから。
呆然としつつ、不審にも思いながら、私は彼の腕をつんつんと人差し指でつついてみる。けれど彼がそれに反応を示すことはない。
本当に何なのか分からなくて、私はまた「沖田隊長?」と声をかける。
「えっと……私、なんかしちゃいました…?」
「しちゃってるわバカ」
「しちゃってるんですか!?」
それは衝撃だ。そんなこと思いもよらなかった。いや、何かしちゃったのかと尋ねたのは私だけれども、何かされたのは私だと思っていた。今でも思っている。私が一体彼に何をしたというのだろう。説明を求めるべく「どういう意味ですか」と再び尋ねた。
沖田隊長ははぁぁ…と大きな溜め息をつきながらに、なんだか弱っているような声で言った。
「……爆発しそう」
「は?」
思わずその一音で返してしまえば、彼は「ッだから!」と、今度は自棄になったような声で言う。
「テメェの声がヤバすぎんでィ!だめとか言ってんじゃねーやバカ!!」
「はっ……それは貴方が悪いんでしょう!?貴方がみっ…耳とか触ったりするから!!」
「んな声しろって頼んだ訳じゃねーよ!!」
「貴方言ってることめちゃくちゃですよ!!」
「うるっさい!!ここ病院ですよ!!」
と。そんな言い争いをしていれば急にガラッと病室の扉が開いて看護師さんがそう怒鳴ってはすぐにまた出ていった。扉が閉まる音の余韻が消えてから、私達は声を揃えて「すみませんでした…」と拍子抜けした声でもうそこには居ない看護師さんに呟いた。
そうしてお互いに顔を見つめて、彼は顔を赤くしたまま驚いた表情をしていて、きっと私も同じ表情をしているのだろう、二人同時に吹き出して笑い出してしまった。怒られてしまったばかりなので抑えた声だけれど、二人分の笑い声が病室に響いていた。
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もち(プロフ) - 感動して1人で泣いてました😭😭とても引き込まれて気づいたら最後まで読んでました!!完結まで長かったですが素敵な小説書いてくれてありがとうございました!お疲れ様でした!😊😊 (2022年4月4日 14時) (レス) id: f64c573671 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - astrumlunaさん» astrumlunaさん!ありがとうございます!!最後まで読んでくださり嬉しいです!!私もこのお話の沖田隊長と夢主ちゃんはとても愛しいです(o^−^o) これからも二人は幸せになっていくんだと思います…!!素敵なコメントありがとうございました!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
astrumluna - この作品を見つけてから、一瞬で読み終わってしまいました!! 凄く引き込まれるお話で、沖田さんも夢主ちゃんも大好きです笑 最終話の“さぁ、今日も〜”という部分でこれからも幸せな日々が続いていく感じがしてとても好きです!! もっともっと2人の物語を読みたいです!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 憐さん» 憐さん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまってすみません…!一日で…!!長いのにありがとうございますぅぅ!!日下部さんは読者様から人気でとても嬉しく思います!(o^−^o) きゅんきゅんを目指したので沢山きゅんきゅんして頂けたなら大成功です! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - yukakdonaldさん» yukakdonaldさん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまい申し訳ありません!!番外編!久し振りに日下部さんを書きたいです…!!どんな風にしようかそろそろ考えてみようと思います!!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年4月5日 21時