【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

停滞しているよう ページ21

「…何を拗ねてるんですか」

「…」

「…そ、そんな風にしたって私の意思は揺らぎませんからね…！？」

「…」

「なんとか言ったらどうなんですか…！？」

「…」


無視だ。華麗なる無視だ。なんて綺麗に無視して見せるのだろう。無視のお手本のようだ。私は思わず漏れてきそうになる溜め息をなんとか押さえる。溜め息さえついてしまったら負けに近付くような気がしたのだ。彼の行動によって私が焦っている、という心情を彼に読み取らせることになる。沖田隊長の思い通りになんてなって堪るかと決意したばかりなのだ。彼によって私の内心が乱されているということを彼に示してはならない。いつまでもやられっぱなしではいられないのだ。

沖田隊長の方に顔は向けないまま、けれど視線だけをそちらに向ける。沖田隊長はこちらに背を向けて白い掛け布団を肩まで被っている。その背中からは彼が何を考えているのか、当然分かるわけもない。彼はどんな顔をしているだろう。むくれた顔をしているだろうか。

むくれてたって貴方が悪いんですからね、と内心で言ってやりながら、私は口を開く。出来る限り毅然とした声色を心掛けて。


「…あ、あの…こ、子供みたいに拗ねるのやめたらどうなんです…そうやったら私がそっち向くと思っているのでしょう…お見通しですからねそんなの！」

「…」

「わ、私は何があっても貴方が謝るまでそちらを見ませんからね！」

「…」

「…」


私からの主張はこれで以上だ。彼に主張したいことはすべて伝えた。が、沖田隊長からの応答はない。まるで聞こえていないのではないかと思えてしまうくらいに。けれど彼が聞こえていないわけがない。聞こえているくせにそういう風に振る舞っているのだ、そうやって私を煽っているのだ。分かりきっていることだ。

再び沈黙が降りてくる。時計の秒針の音すらしない。何故ならここにはデジタル時計しかないからだ。耳鳴りがするほどの沈黙。過ぎていく時間が相当ゆっくりなように思える。時間が止まっているのではないかとすら思える。


「…」

「…」


彼は未だに何も言わない。私も口を真一文字に閉じたまま黙り込む。
物音を立てることもなんとなく躊躇われて、身体が固まったかのように静止する。この病室だけ回る世界から隔絶されて取り残されて停滞しているようだった。


「…」

「…ッ」


そして私にも限界が訪れた。

貫けよ→←めんどくさいぞ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す