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「あっ…あ、えぇと」
うろたえる大人3人に、彼女は小さく笑ってソファから立ち上がった。
「はじめまして、いつも夫がお世話になっています」
入ってきたときも感じたが、とても小柄だ。
目尻をさげて穏やかに微笑むその顔は、いっそう愛らしさを際立たせる。
医局が朗らかな空気に包まれたとき、彼らの頭にふと疑問が浮かぶ。
────旦那って誰だ。
彼らの素朴な疑問は、すぐに解決されることとなる。
医局のドアを開けた、張本人によって。
「────結稀奈」
「ごめんなさい、ここまで呼んでしまって」
駆け寄ろうとした結稀奈を、オペから戻った藍沢がやわく制止する。
「来なくていいと連絡したただろ。
…別に1食くらい食べなくても平気だ」
首の後ろに手をやりながら肩をすくめる藍沢に、彼女はぐいぐいと持ってきていた保冷バッグを押しつけた。
「だめ。
3食きちんと食べるって約束したでしょう?」
「……悪い」
じっと薄茶の瞳に見上げられて、彼は参ったという様子でそのバッグを受け取った。
────これは。
この、2人の間に漂う空気は。
「……ねぇ、藍沢先生。
そのひとって…」
代表して藍沢におずおずと聞いた、スタッフリーダーの白石恵に、藍沢はしれっと返した。
「妻だ」
「…、────はあぁっ!?」
藤川と緋山の声が、見事にシンクロして医局に響き渡った。
「つ、妻って…あの、失礼ですけど年齢を聞いても宜しいですか?」
「今年の秋で、29になります」
はにかみながら緋山の質問に答えた結稀奈は、するりと両手でお腹を撫でた。
その様子に気がついた緋山が、そっと彼女に歩み寄る。
「あ…もしかして」
「はい。
17週と…今日で3日になります」
「わぁ〜おめでとうございます!」
結稀奈のやわらかな雰囲気に慣れたのだろう、白石もそばに寄って、そっとお腹に手を当てる。
「私、緋山です。
以前周産期医療センターで働いていたことがあって、何か困ったことあったら遠慮なく相談してください」
「白石です。
良ければまたいらしてください、いつでもお待ちしています」
緋山と白石の言葉に、結稀奈は嬉しそうに微笑んだ。
「藍沢結稀奈です。
ありがとうございます。
耕作から聞いています、おふたりとも、とっても優秀なお医者さんだって」
「────結稀奈」
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Mitsuki - いです!お忙しいことと思いますが、更新頑張ってください(^ ^) (2018年1月4日 18時) (レス) id: aed2f04add (このIDを非表示/違反報告)
Mitsuki - 明けましておめでとうございます!もうすっかり香坂先生ファンです笑リクエストで、 香坂先生の新年の目標が聞きた (2018年1月4日 18時) (レス) id: aed2f04add (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 名前変えさせていただきました。以前 仰られていたホンマでっかのやつ見てみたいです~(●^o^●)時系列とか、まぁ 気にしません! (2017年12月29日 22時) (レス) id: 6208755813 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 更新ありがとうございますっ!!神ですね…((T_T)) (2017年12月26日 9時) (レス) id: 6208755813 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - 私のところにも香坂先生サンタが来て欲しいです・・・! 素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございました! ayanelさんのペースで、これからも更新頑張って下さい! (2017年12月26日 8時) (レス) id: d6d184a47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月18日 3時