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(香坂)
さて。
HCUに戻ったのはいいけど、冴島さんと秋本さんの容態が気になって、眠くなるどころか目が冴えてしまって眠れない。
────こんな時間になんてむしろ寝れない…。
美帆ちゃんに頼んで持ってきてもらったスマホと目薬(実は、仕事中はコンタクトなんだよね)は、設置してもらったテーブルの上に無造作に転がっている。
ぼーっと点滴の雫が落ちていくのを眺めているのも、そろそろ飽きてきたところだった。
────あ…、そういえばパーカー…。
三回折ってようやく指先が覗くほどに大きいダークグレーのパーカーの袖を、きゅ、と握り締める。
除染の際に身体が冷えてしまったのだろう、くしゃみを繰り返していたら、あいつが当直用の仮眠室から取ってきて、無言で羽織らせてきたものだ。
この状況で風邪をひかれたら困る、と小さく呟いて。
……にしても。
この体格差は…ちょっとショックだよなぁ。
ぷらぷらとパーカーの袖に通っている右腕を振る。
────そのたびにあいつの香りに包まれている感覚が増して、思わず膝を立ててその上に額をつけた。
さらりと、いつの間にかほどかれていた髪が肩を滑り落ちて、シーツに広がる。
「……────ばか…。」
やさしく、しないでよ。
勘違い、しちゃうから。
「────A?」
「っひゃ!?」
…………アラサー女子になんて声出させる。
そろりそろりと顔を上げた先には、モニターをチェックしに来たのだろう、耕作が眉間に皺を寄せて立っていた。
「……び、びっくりさせないでよ、心臓に悪い…」
「そんな格好でいる方が心臓に悪い」
そう言われて、いまの自分の状況を確認した。
「…あ」
膝を抱え込むような形でうずくまっていれば、どこか具合が悪いのかと思われても仕方がない。
────気を、遣わせちゃったな。
二人の間に、沈黙が流れる────かと思われた。
それを先に打ち破ったのは、以外にも耕作だった。
「……具合は、もういいか」
「あ…うん、すっかり。
あとパーカーありがとね、助かった」
ぱっと下がりかけていた顔を上げた先には、自分の脇に立ついつもと変わらない顔。
「…どうせ明日からまた走り回る気だろ」
「うぐ」
なんだこいつ、エスパーか、エスパーなのか!?
思わず言葉に詰まると、ぽん、とあたたかい手が頭に乗った。
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時