検索窓
今日:7 hit、昨日:53 hit、合計:747,001 hit

反則級の頭脳 ページ24

「そんな訳が無かろう。……と云うかお前、金は如何した」

「あ、何か此の人が奢ってくれるってー!」



もう止めて頂きたいんですがね、という言葉は喉奥に押しやった。福沢さんが真偽を確かめるように此方を見て来たが、曖昧に笑って頷いておけば、大体のことを察してくれたようだった。

「全額払おう」と云ってくれたが、今度は此方が吃驚する番である。探偵社社長に金を払わせるなど以ての外だ。いやそんな、と慌てて私も財布を出そうとした途端、「払わせて頂く」という芯の通った声で云われた。逆らえる訳がなかった。今日が命日かもしれないレベルで福沢さんの眼力はえげつない。


共に会計に行くと、福沢さんがレジに表示された金額を見て目を瞠った。あの、払いましょうかと云えば大丈夫だと返された。



「失礼する」

「またね!」

『え、えぇ……』



弱々しく手を振った。人生十年分の疲れが一気に来た感じがした。












乱歩、と福沢が彼に話しかけた。乱歩は判っているとでも云いたげに笑みを深めていた。

「うん、彼女はポートマフィアの人間」と何でもなさそうに彼女の秘密をバラす。


矢張りか、と福沢が頷いた。彼にもそのこと自体の検討はついていた、何せ彼女の横に居た金髪の幼女──慥か名前はエリスだ。彼女に福沢は逢ったことがあるし、戦ったことすらある。向こうは欠片も此方を覚えちゃいないようだったが。


……しかし、と福沢は思う。



「随分と、明るそうな性格だったな」



凡そ黒社会の中では、半日も生きていられなそうな程だった。屈託なく笑った表情には、裏があるなんてことは考えられなかった。多分何も考えていなかったのだろうと思う。


乱歩もそうだね、と相槌を打ちながら考えた。わざわざ初対面の人間に話し掛け、そのまま奢りそうになってしまうなど相当のお人好しの証だ。オレオレ詐欺とかに遭いそうだな、と乱歩は彼女にとってかなり失礼な思考をする。

……でも。



「僕、彼女に少し興味が沸いたよ」



不意にそう云った乱歩に、福沢は驚き目を見開く。彼が人に興味を持つことなどほぼ無い、ましてや逢って数分の人物に。

乱歩の顔は、新しい玩具を見つけた五歳児の様な顔をしていた。但し、其の五歳児が見たら物凄く怯えるような。


……何処で育て方間違えたか、と福沢は真剣に考えた。

──だが、まあ。



「……慥かに、不思議な人物ではあったな」



不思議と、彼女の傍に居て、離れたくなくなるような。


──それからは二人は無言で、探偵社へと続く道を歩いて行った。

連絡先交換、其の壱→←金というものは羽ではないだろうか



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (341 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
619人がお気に入り
設定タグ:文スト , トリップ , 逆ハー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白夜の世界 - ユーヒ様、申し訳御座いません。ですが、優姫ちゃんは死んだおりません。作品の中では余り細かい描写をしていないのですが、今昏睡状態になっております。…あと、本当にどうでもいいかもしれませんが、ユウキちゃんです…。御気分を悪くさせてしまい申し訳御座いません (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - ゆきな様、ありがとう御座います!其方もお体に気をつけて下さい! (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
ユーヒ - 夢主の親友が私と同じ名前で、死んだって聞いて何かショック。('' ) (2019年4月3日 1時) (レス) id: 1dd8890cea (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - ヤバい太宰さん変t))ん"ん"…織田作かっこいい!(中也さん推し)これからも無理せずに頑張ってください (2019年4月3日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - 船長様、ありがとう御座います!此れから続編へ行きますので、どうぞ次の話も、宜しくお願いします! (2019年4月2日 15時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2019年2月24日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。