反則級の頭脳 ページ24
「そんな訳が無かろう。……と云うかお前、金は如何した」
「あ、何か此の人が奢ってくれるってー!」
もう止めて頂きたいんですがね、という言葉は喉奥に押しやった。福沢さんが真偽を確かめるように此方を見て来たが、曖昧に笑って頷いておけば、大体のことを察してくれたようだった。
「全額払おう」と云ってくれたが、今度は此方が吃驚する番である。探偵社社長に金を払わせるなど以ての外だ。いやそんな、と慌てて私も財布を出そうとした途端、「払わせて頂く」という芯の通った声で云われた。逆らえる訳がなかった。今日が命日かもしれないレベルで福沢さんの眼力はえげつない。
共に会計に行くと、福沢さんがレジに表示された金額を見て目を瞠った。あの、払いましょうかと云えば大丈夫だと返された。
「失礼する」
「またね!」
『え、えぇ……』
弱々しく手を振った。人生十年分の疲れが一気に来た感じがした。
乱歩、と福沢が彼に話しかけた。乱歩は判っているとでも云いたげに笑みを深めていた。
「うん、彼女はポートマフィアの人間」と何でもなさそうに彼女の秘密をバラす。
矢張りか、と福沢が頷いた。彼にもそのこと自体の検討はついていた、何せ彼女の横に居た金髪の幼女──慥か名前はエリスだ。彼女に福沢は逢ったことがあるし、戦ったことすらある。向こうは欠片も此方を覚えちゃいないようだったが。
……しかし、と福沢は思う。
「随分と、明るそうな性格だったな」
凡そ黒社会の中では、半日も生きていられなそうな程だった。屈託なく笑った表情には、裏があるなんてことは考えられなかった。多分何も考えていなかったのだろうと思う。
乱歩もそうだね、と相槌を打ちながら考えた。わざわざ初対面の人間に話し掛け、そのまま奢りそうになってしまうなど相当のお人好しの証だ。オレオレ詐欺とかに遭いそうだな、と乱歩は彼女にとってかなり失礼な思考をする。
……でも。
「僕、彼女に少し興味が沸いたよ」
不意にそう云った乱歩に、福沢は驚き目を見開く。彼が人に興味を持つことなどほぼ無い、ましてや逢って数分の人物に。
乱歩の顔は、新しい玩具を見つけた五歳児の様な顔をしていた。但し、其の五歳児が見たら物凄く怯えるような。
……何処で育て方間違えたか、と福沢は真剣に考えた。
──だが、まあ。
「……慥かに、不思議な人物ではあったな」
不思議と、彼女の傍に居て、離れたくなくなるような。
──それからは二人は無言で、探偵社へと続く道を歩いて行った。
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白夜の世界 - ユーヒ様、申し訳御座いません。ですが、優姫ちゃんは死んだおりません。作品の中では余り細かい描写をしていないのですが、今昏睡状態になっております。…あと、本当にどうでもいいかもしれませんが、ユウキちゃんです…。御気分を悪くさせてしまい申し訳御座いません (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - ゆきな様、ありがとう御座います!其方もお体に気をつけて下さい! (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
ユーヒ - 夢主の親友が私と同じ名前で、死んだって聞いて何かショック。('' ) (2019年4月3日 1時) (レス) id: 1dd8890cea (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - ヤバい太宰さん変t))ん"ん"…織田作かっこいい!(中也さん推し)これからも無理せずに頑張ってください (2019年4月3日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - 船長様、ありがとう御座います!此れから続編へ行きますので、どうぞ次の話も、宜しくお願いします! (2019年4月2日 15時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2019年2月24日 21時