金というものは羽ではないだろうか ページ23
「美味い! 店員さん、おかわり!」と元気よく響く、探偵風の男の声。
お名前を先程訊いたが、勿論「江戸川乱歩」という答えが返って来た。取り敢えずマジで運がねえなと思った。何でわざわざマフィアに入っている私の前に現れるんだよ、止めてくれよ絶対バレちゃうだろ。
なんて脳内の愚痴を欠片も知らないであろうその二人は、さも美味しそうに目の前の菓子を食べていた。いやあの、そんなに美味しそうに食べてくれるならよかったと云えなくもないんだけど、その、どうしてもね。金がね。
なんて云える訳もないので、私はもう一度財布の中身を確認した。
明日太宰さんにお金を前借りしようと決意した。真面目に元の世界の太宰治みてえになってしまったクソったれ。
店員さんが私だけ何も頼まないのを見兼ねたのか、「あの、ご注文は」と気弱そうな笑顔を浮かべて訊いてくれた。しかし私の返答は変わらない。
『水で』
「あ……、かしこまりました」
泣きたい。
机に突っ伏した後に、バッと目の前の乱歩さんを見上げた。横でぎょっとした顔をエリスちゃんが向けて来たが、正直そんなことに構っていられないほどの窮地に私は立たされていた。
『……あの乱歩さん、これ以上は流石にその、あの勘弁して頂きたく』
バンッ! と両手で机に手を突いて頭を下げる。この世界に来てから私のプライドという四文字は一体何処に消えたんだろうか。あぁいや太平洋に自分で捨てて来たんだった。どうにかして取り戻せないだろうかなんて下らない妄想が頭を過る。
そうやって勢いよく頭を下げたが、乱歩さんは食べていたフォークをくるくると片手で回して、「だって君、奢ってくれると云っただろ」と云った。
そうなんだけどっ……! と歯軋りする私に、エリスちゃんが「さっきから何も食べてないけど、お腹空かないの?」と訊いて来た。空くのはお腹じゃなくてお財布なんだなぁ〜〜!?
あぁクソ、ダメだこれは。横に見えるヨコハマの青空をぼぅっと見上げることで現実逃避をすることにした私の鼓膜に、重低音の渋めの声が届いた。それを聞いた瞬間、背筋が反射的に伸びるぐらい──というか待って水が気管に、
『げふっごっほおほっ!』
「ちょっと汚いわよ!」
「あぁ社長! 社長も食べに?」
福沢さんじゃねーか!(半ギレ) あとすげぇ失礼だけどめっちゃ店内と雰囲気合ってないな! 合成してるんですかってぐらいだな! すみません噴き出しそうなのでちょっと視界外にいってもらって良いですか!
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白夜の世界 - ユーヒ様、申し訳御座いません。ですが、優姫ちゃんは死んだおりません。作品の中では余り細かい描写をしていないのですが、今昏睡状態になっております。…あと、本当にどうでもいいかもしれませんが、ユウキちゃんです…。御気分を悪くさせてしまい申し訳御座いません (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - ゆきな様、ありがとう御座います!其方もお体に気をつけて下さい! (2019年4月3日 7時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
ユーヒ - 夢主の親友が私と同じ名前で、死んだって聞いて何かショック。('' ) (2019年4月3日 1時) (レス) id: 1dd8890cea (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - ヤバい太宰さん変t))ん"ん"…織田作かっこいい!(中也さん推し)これからも無理せずに頑張ってください (2019年4月3日 0時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界 - 船長様、ありがとう御座います!此れから続編へ行きますので、どうぞ次の話も、宜しくお願いします! (2019年4月2日 15時) (レス) id: 15ab1d9eda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2019年2月24日 21時