生命線を伝うもの ページ27
◇
「…芽吹?」
「……げとう、くん、」
月白芽吹は、私とAの、小学校からの同級生だ。
いつもふわふわしていて、Aとよく突拍子のないことを言い出すから、よく私が面倒を見ていた記憶がある。
「二人は本当に歌が上手いよね。私、二人の歌、好きなんだよね」
「あ、ありがとう…」
「夏油くんに言われると自信つくなあ〜
あのね、僕、後輩と一緒にネットで歌ってみたやろう…かなって思ってて」
「わ、私も…実は、知り合いにバンドに誘われてるんだ。…傑くんが言うなら、やってみようかなあ…」
「そうなのかい!? じゃあ、ファン第一号になろうかな」
「そうだね、傑くんが私と芽吹くんのファン第一号だね! …ちょっと返事しなきゃ」
逐一曲を聴かせてくれる芽吹が、ライブハウスでの公演のチケットをくれるAが、健気でやさしくて、大事にしたいな。なんて思っていた。
高専に入ってからは疎かになっていたみたいだけど、今となってはメキメキ力をつけて、ソロで活動する芽吹と、とあるバンドに入っているAの歌声がテレビから聞こえてくるのは日常茶飯事だ。
悟はAのファンだけど、特級呪術師がそうそうライブに行けるわけもなく、「A=歌手のA」とまでは至っていないから知らないんだけどね。
「…起きたのかい?」
「…僕………生きてたんだ、」
ぼんやりとした声だった。何だか、もう諦めているみたいな、そんな声。
その後、静かに涙を流して、勢いよく起き上がってきた。傷口が開く! と声をかけようとしたけど、両手を掴まれて何も言えなかった。
「ごめん、ごめんね…! 僕、Aちゃんに、庇われて…!」
Aちゃんが、大怪我して…! 初めて聞く彼の大声に、泣き声に、何も言えなかった。
ということは、あの呪霊を祓ったのは芽吹ということになる。なんてことだ。
「あの呪霊を祓ったのは、芽吹なのかい?」
「…うん。そうだよ」
結構弱ってたからできただけだよ。と呟いた。
「はやく、おきてくれないかなぁ…」
僕もう歌えないや。力なく笑う芽吹が、もうどこかに消えてしまいそうで。
───早く起きてあげて、私の好きな歌が聞けなくなるだろう?
◇
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まいとりー。(プロフ) - 紅葉夕さん» 紅葉夕さん、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉ありがとうございます! すごく嬉しいです。楽しんでいただけてよかったです!! 文字書き同士、一緒に頑張っていきましょう!! (2022年8月26日 21時) (レス) @page40 id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
まいとりー。(プロフ) - マリオットさん» コメントありがとうございます〜!この作品に貴重なお時間を使っていただけて本当に光栄です…。恋愛は書き慣れていないので私自身不安なんですけど、ぜひ楽しんでいただけるように頑張らせていただきます!! 応援、本当にありがとうございます! (2022年8月6日 19時) (レス) id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 面白過ぎて…感動です… 応援してます‼ (2022年8月6日 16時) (レス) @page5 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐちや | 作成日時:2022年8月5日 7時