見落としたあのこの白い手 ページ19
◇
「あっ、家入さん」
「あ、Aじゃん。……って、硝子でいいよ。苗字じゃなくてさ」
「あはは…私、どうしても苗字で呼んじゃう癖があって…」
ごめんね、とアイツが謝ると「ううん、気にしないで。気長に待つよ」と硝子が言った。
「ええと…星霜 Aです。四年間よろしく…」
一目惚れなんてあるんだ、って思った。この俺がまさか、一目惚れなんて。
謙虚でちっこくてかわいくって、護ってやんなきゃって。そう思ったのは初めてだった。
話を聞けば同じ同期の傑の幼馴染らしくて、アイツのことは「傑くん」って下の名前で呼んでて。
俺と硝子はいつもやきもきしてる。…アイツはいいのに、俺らはだめなのか、って。
…しかも、俺はAに苦手に思われているらしかった。
「…あ………ご、ごじょう、くん、」
いつも怯えた顔をしているし、何ならすんげえ他人行儀で。
硝子のことはいつの間にか「硝子ちゃん」なんて呼ぶようになってて、どうしようもなく悔しかった。俺だけ、違うみたいで。
別にどうでもいい奴だったら俺だってどうでもいいけど、でも、コイツは、Aは違う。
「邪魔。退け」
頭の中ではそんなこと微塵も思っちゃいねーのに、口から飛び出る言葉は全部反対になる。
…俺の、悩みの種だった。
「またAのこと怖がらせたみたいだね、悟」
「…るせー……」
「Aが好きなのはわかるけれど、あんまり怖がらせるのなら近付くのはやめてくれないかい？」
「過保護かよ」
「大事な幼馴染だからさ」
傑とはこの間殴り合いの喧嘩をした。校舎は半壊した。夜蛾センは怒ろうにも怒れなかっただろう。
本当だったらAにも言ってやりたいところだが、硝子が大泣きしながら言いたいこと全部言ってくれたから、やめた。
だって二人そろって離反しようとしてたんだぜ？ 信じられるか？ 無理だ無理。
…でも、気付いてやれなかった俺と硝子にだって非はあった。近くにいた俺らが、気が付けなかったんだから。
「…明日は、素直になれるといいんだけどなあ…」
そんな風に毎日を過ごしていた。何も進展さえしないまま。変わったのは、Aが最近異様に忙しくしていること、硝子が勉強に追われていること、俺が一人称を僕に矯正しようとしていること、傑が呪術によって苦しむ子供を救おうとしていること。
あっという間に高専を卒業する季節になっていて、
───気が付いたら、僕の毎日から、Aがいなくなっていた。
◇
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まいとりー。(プロフ) - 紅葉夕さん» 紅葉夕さん、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉ありがとうございます！ すごく嬉しいです。楽しんでいただけてよかったです！！ 文字書き同士、一緒に頑張っていきましょう！！ (2022年8月26日 21時) (
レス) @page40 id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
まいとりー。(プロフ) - マリオットさん» コメントありがとうございます〜！この作品に貴重なお時間を使っていただけて本当に光栄です…。恋愛は書き慣れていないので私自身不安なんですけど、ぜひ楽しんでいただけるように頑張らせていただきます！！ 応援、本当にありがとうございます！ (2022年8月6日 19時) (レス) id: cfb5124360 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 面白過ぎて…感動です… 応援してます‼ (2022年8月6日 16時) (レス) @page5 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぐちや | 作成日時：2022年8月5日 7時
