【黒バス】一生言えない恋の話【短編集】

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「ごめん、何が？」




好きな人のことはすべて分かった気でいたい――そんな乙女心も簡単に折れる、康次郎の会話力。



対私のときだけの、その、何もかもが足りていないような感じは、




( ...どう捉えればいいのだろう )




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考え事をしていたせいで、足元をよく見ていなかった私は、小さな水溜りに足を浸からせてしまった。
靴が冷たくなって、靴下に染みていく。



「あーあ」


「？濡れてしまったからか」


「そうだよ…いや、キョトン、じゃないから」


――この人は本当に足りてない。

ふと、中学のときに康次郎が見せてくれた、国語のテストの答案を思い出した。
『説明しなさい』という問題にすべて三角の部分点がついていて、『主語は？』と書きなぐられた赤。



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欠けていることに、決して引いているわけではなくて、なんなら、うん、
むしろ、それでいいのに、と私は思う。


どうしようもなく窪んだところに、合わない大きさのものを無理やり詰め込んで溢れさせるんじゃなくて、5立方センチメートルの穴には5立方センチメートルのものを、2πrの丸い穴には2πrのものを。




そうすることが一番だって、
誰かと語り合ったわけではないけれど。


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康次郎が傘の外に手を出す。
雨はやんでいない。


三秒ほど経ち、それでもまだ康次郎は手を引っ込めない。




･･･手の甲が、冷たそうだ。



康次郎は突拍子もないことをすることがたまにあるよなぁ…
＿＿唐突に、彼が口を開いた。



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「濡れてしまったのなら、洗って乾かせばいい」




それだけだ、と。
それだけのことだと言う康次郎には、相変わらず主語は無いし他人に詰め込むどころか有り余るものもない、ような気がする。



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