【黒バス】一生言えない恋の話【短編集】

3 ページ29

.




「か、帰れる、って……、なんで急に…どうやって……？」



聞きたいことはいっぱいあった。



「あー、まぁ、成功するかどうかは分かんねぇけど、こっち飛んできた日のこと思い出したんだよ」




言いたいことも、山ほどあった。




.





.






なんでそんなに簡単に、帰れる！、なんて思えるんだろう、お互いに。


根拠はどこにも無かったけれど、“多分”。そういう気がした。



.



言いたいことは、山ほどあった。



きみがいたこの数十日だけで、洗うお皿の枚数が増えた。洗濯物も。テレビをつける回数は変わらなかったけれど、ニュースやクイズ番組を観ることが楽しかったこと。




推し、かわいい、かっこいい。
そういうことは何回も言った。聞き飽きた、と言われるくらい。まこたんはやめろ、とも言われた。



.




暮らして、分かった。




「私ね、まこた...真くんのこと、今までの…今までで、いちばん、」





.

.



―――告白みたいに聞こえるから、やめた。




確かにそれは紛れもない告白だった、のだけれど。





.

.



「…なーんちゃって、ね」



「････なんちゃって、ってなんだよ」





汲み取り。





「その場の雰囲気だよ。このあと何言うか考えてない」



「･･あ、そ」



.



へら、と笑えば、はぁ、とため息を吐かれた。



返してくれたのがため息でよかった。それ以外じゃなくて、本当に良かった。





.





「おやすみ」
「..ん、おやすみ」




最後の会話だった。
あいさつ。
それ以下でもそれ以上でもなくて、





.

4→←2

ラッキーカラー

あずきいろ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す