【黒バス】一生言えない恋の話【短編集】

お菓子がきらいなんておかしいな〜って話/紫原敦/好き嫌い/※伊月先輩は出てきません ページ20

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進級。新クラス。リセット。
何もかもに真新しさがある、四月のこの時期というのは、バタバタと慌しかったりもするだろうけれど、ピカピカで、いい。


ランドセルがやけに目に付く。
空の青と花の色、風のにおい、外のすべてが五感を通じて私に入ってくる。

好きな季節だ、と思う。春はね。まぁ、うん、春は。



緊張するけどクラス替え、とか。
新しい先生とか。変わったとか変わらなかったとか。



…と、いくら御託を並べたところで何も変わらない。



「じゃあ、左端の一番前の席から自分の名前と――」





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私が避けたいのは、これ。




――自己紹介、である。




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あと三人、あと二人で私の番だ……！


自己紹介の何が嫌って、そういうところで第一印象が決まっちゃうところだよね。

良いところも合わないところも、数十秒の自己紹介で分かるわけないじゃん！？ないじゃん？！？

緊張して声が裏返ったりでもしたらどうしよう、一年間ずっと声を裏返しておけば解決するじゃん！？！



―なんて考えているうちに、順番が回ってきてしまった。


考えるな感じるな私！！！自己紹介のドツボに嵌るぞ(？)！！！



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名前を言いながらふと黒板を見れば、箇条書きで『自分の名前』とある横に、『好きな食べ物や苦手なものも!!』。
それは白いチョークで書かれており、黄色いチョークで波線も引かれていた。


( えっ今はじめて見た……
　見たの今がはじめてなんですけど………
　好きな食べ物？え？みんな何言ったの？かわいい感じのやつ？かわいくてかつ嘘にはならないやつ？？



　……にんじんケーキ、か……！？ )



一瞬詰まって(言葉も思考も)、回りくどいことはやめよう！、という結論に落ち着いた。



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