Be My Last (ページ16)

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嵌められたな、ぼそりと兄者が呟く。

手の甲から血を垂らしながら銃を構えるその姿。ひとまず先程の攻撃が大事に至っていないことを確認し、弟者は周囲と眼前の敵に集中を向けた。

電気がつき明るくなった室内。カーテンを閉められているが、ソファやテーブルが置いてある応接間のようなつくりだ。

そして黒い人影は微動だにせず、兄弟を睨みつけている。
全身を黒服で覆い面をつけているため、読み取れる情報は少ない。

小柄に見えるが、銃を弾いた力と兄者に斬りかかった速さ、手練れと理解するのに時間はかからなかった。

兄「停電にジャミング…随分用意周到だ。よっぽど俺らを殺したいみたいだな」

兄者が話しかける。敵からの返答はない。
得体のしれない敵の、一瞬の隙を見出そうとしているようだ。

弟「…ふん！」

両者睨み合いの中、先手を打ったのは弟者だった。
銃口は同じく銃を持つ兄者に向けられている。
敵が出遅れたところを穿とうと、得意の蹴りを繰り出した。

が、それもむなしく。
弟者の脚は空を切り、そのままソファへなだれ込む。
呼応するよう動いた敵は、兄者目掛けて突っ込んでいた。

兄者は応じるように弾を打ち込むが、斬り込まれた手が引き金を引く力を鈍らせる。
ほんの少し遅れた弾は、敵の腕をかすったのみだった。

兄「…っ！」

敵の勢いはなお止まらず、大きく振りかぶり腰の刀を抜刀する。
あっという間の一瞬、兄者の首には刃先が張り付いていた。

弟「兄貴！」

兄「…動くな」

首に冷たい刃を当てられながらも、兄者は敵へ銃を向けた。
こちらへ来ようとする弟者を制し、この場を切り抜ける策を考える。

弟者を使うにも、自身が人質になっているため動きにくい。
構えた銃の引き金を引けば、即首を落とされるだろう。

通信が切れた乙一はどうだ。さすがにもう援護に来てもいいはずだが、それを待っていたら先に殺される。
いや待て、こいつはあの暗闇の中いつでも俺らを殺れたはず…

兄「何故まだ殺さない」

「………殺してやる」

低い悲痛な声、それは男ではなく女のものだった。

兄「…お前…」

『その通りだ、何故殺さない』

突然、部屋中央のテーブルから声がする。
その場にいる3人が、予想だにしない第三者の声に驚いた。
しかしみな、それが恵比寿のものであるとすぐに理解した。

『もしかして情が移ったか？なあ、A』

緊迫に包まれた室内は、突如現れた声によりさらに混乱へと引き込まれていった。