眉間をもむ ページ9
ハグリットは思い出しながら、ポツポツと話す。
「森番をしているって言ったな……そしたらどんな動物を飼ってるかって聞いて来たんで……それに答えて……それで、ほんとはずーっとドラゴンが欲しかったって言ったな……それから……」
あんまり、覚えていないとハグリットは言った。次々と酒をおごってくれるから、とも。それでも、さあなあ……と思い出そうとする。
「それからドラゴンの卵を持ってるけどトランプで卵を賭けてもいいってな……でもちゃんと飼えなきゃだめだって、どこにでもくれてやるわけにはいかないって……だから言ってやったよ。フラッフィ―に比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだって……」
フラッフィ―とは４階の、立ち入り禁止の廊下の先にある部屋にいる、３つ頭の、ニコラス・フラメルに関係する物を守っているであろう、あの怪物犬である。尚、怪物犬はAがつけたあだ名である。
それで、というハリーの声は、どこか緊張を孕んでいるように感じる。
「その人はフラッフィ―に興味があるみたいだった？」
「そりゃそうだ……三頭犬なんて、たとえホグワーツだって、そんな何匹もいねえだろう？ だから俺は言ってやったよ」
ハグリットの声が自慢げになる。
「フラッフィ―なんか、なだめ方さえ知ってれば、お茶の子さいさいだって。ちょいと音楽を聞かせればすぐねんえしちまうって……」
３人分の足音が遠ざかっていく。それと同時にハグリットが吠える。
「忘れてくれ！ おーい、みんなどこに行くんだ？」
３人分の足音が完璧に聞こえなくなってからAは、ハグリットの背後から出てくる。ハグリットが、聞いたか？ と聞いてくる。
「うん……」
それにAはボンヤリと答えた。ハグリットが、忘れてくれとかなんとか言っているのが、遠くで聞こえた。
遠くで聞こえたのは、あることが頭を占めていたからだ。
ハグリットが、ホグワーツ関係者以外の人に、怪物犬をどうにかする方法を教えてしまった。
ドラゴンをどうやってゲットしたのかを聞きに来たのに、とAは眉間をもむ。
とんだことを聞いてしまった。
「ありがとう、ハグリット。あ、大丈夫、忘れるからね」
ハグリットがぎこちなく頷くのを見ながら、女子生徒はやるべきことを、きちんと整理していた。まずはじめにやる事は、と考えて笑みがこぼれる。
なんだ。前と変わらない。
Aは小屋を後にする。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年8月6日 16時
