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千空が泊まるからと料理長が腕を奮ってくれたらしい料理。匂いは美味しそうなのに、口に運ぼうとすると吐き気が込み上げて食べることが出来ない。水すら飲めないわたくしを千空がカトラリーを置いて心配そうに見つめてくる。
「…部屋に戻るわ」
千空の付き添いを断り、わたくしは食堂を出た。
今日の記憶が全くなくて、夢の方がリアルな理由。
それはこっちが夢だからだ。
いや、夢を通り越してもう生と死の狭間かもしれない。
部屋には戻らず、足を運んだのは屋敷の正門。
いつもは夜でも町並みが見えていたのに、今は無明の闇が広がっている。
門の外に足を踏み出そうとすると途端に息苦しくなって、やっぱりここは現実ではないのだと思い知らされた。
でも苦しかろうと戻らなくてはいけない。本物の千空が闇の向こうで待っているのだから。
「よっ、お姫さん」
明るく優しい声とともに肩をたたかれ、振り返ると。
「おじ様…!」
何故か千空のお父様が立っていた。
「よーし、おじさんが手を引いてやろう」
返事をする間もなくわたくしの手はおじ様に握られ、おじ様はずんずん闇の方に歩き出す。不思議と息は苦しくなかった。
先が分からないほど眩い光の前で立ち止まると、おじ様はわたくしの手を離した。
「あの…、おじ様……?」
「悪いな、おじさんはここまでしか行けないんだ。……千空によろしくな」
どこか寂しそうな笑顔を浮かべて、おじ様はわたくしの肩を押す。わたくしの身体は傾き、光に呑まれ──何も分からなくなった。
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食事のシーンは、"あの世のものを食べると、この世に戻れなくなる"という"黄泉戸喫"を意識しました。主人公は無意識に食することを避けていたわけです。
あと、百夜さんが好きなので、百夜さんに道案内してもらいました。
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御影ゆき(プロフ) - わたぁめ ?さん» コミュ障なので万年語彙力は瀕死ですが、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますね! (2021年3月30日 7時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
わたぁめ ?(プロフ) - 凄い … 語彙力が凄い … 応援してます ! 頑張って下さい ! (2021年3月29日 16時) (レス) id: 3d31fada56 (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - ありがとうございます!SSも読ませてもらいますね! (2020年6月27日 12時) (レス) id: 3ab5c4a85e (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» TwitterにもSS挙げてるので良かったらご覧下さいませ。アドバイスは出来ないかもしれませんが、真白さんの小説も読ませていただきます♪ (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» コメントありがとうございます。電子で漫画読みながら、ちょこちょこ書いてるだけで決して上手くはないですよー。オンラインを知らないのもあってアドバイスはあまり出来ないかと…。 (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御影ゆき | 作成日時:2020年5月23日 20時