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「……い！戻ってこい！A!!」
先程とは違う、焦りを滲ませた千空の声が聞こえる。
やけに重い瞼をこじ開けると。
「Aッ！」
「A…！良かった…!!」
「Aちゃん…！」
千空と大樹、杠がわたくしを見つめていた。
千空に抱き起こされながら思考を巡らせる。司に人質にされた後がぼんやりしている。記憶がはっきりしているのはおじ様のことだけ。
おじ様の手の感触が右手と肩に残っている。
"おじさんはここまでしか行けないんだ" "千空によろしくな"
そう言って浮かべていた寂しそうな笑顔。
意味を悟ってしまった途端、わたくしの目からは涙が零れていた。物心ついた時から殆ど泣いたことがないのに、制御出来ないほどに溢れてきて自然にしゃくりあげてしまう。
それを見て、先程まで目を潤ませていた大樹と杠が焦った様子で話しかけてくる。千空も見たことがないくらいオロオロしながらわたくしの髪を撫でる。
早く泣き止んで安心させたいのに悲しみが心の中で渦巻いて、わたくしは目の前の千空に勢いよく抱きついた。記憶にある限り、人に抱きついて大泣きするのはこれが初めてのような気がする。
「……ったく、一体どうしたんだよ…。どっか痛えのか…？」
戸惑ったような声。躊躇いがちにわたくしを抱きしめて、頭と背を撫でてくれる手。優しい手がおじ様を思い起こさせて、涙腺がさらに崩壊してしまったのは言うまでもない。
「…あの……御免なさい……」
漸く涙がおさまって、わたくしは皆に謝罪する。皆には気にしてないと言われたけれども、冷静に振り返ると結構恥ずかしい。
千空にはおじ様のことを話そうと思ったけど、話そうとした瞬間また涙が零れて千空から止められてしまった。誰よりもこのことを知って悲しくなるのは千空なのに。
でも、わたくしもあれが事実なのだと認めたくなくて、結局この場では口を噤むことになった。
「この皮模様がちょっとロケットっぽくない？科学の旗みたくて千空に似合うかも」
そう言って杠が見せてくれたのは袋を割いて出来た布。
「あら、言われてみると確かに」
「星っぽいのもあるぞ！」
「いや1mmもぽくねえ」
杠がその布と棒で強引に当て木をする。
"いらねえ"と言いながらもされるがままになっている千空。
そういうところが優しいのよね。
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御影ゆき(プロフ) - わたぁめ ?さん» コミュ障なので万年語彙力は瀕死ですが、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますね！ (2021年3月30日 7時) (
レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
わたぁめ ?(プロフ) - 凄い … 語彙力が凄い … 応援してます ！ 頑張って下さい ！ (2021年3月29日 16時) (レス) id: 3d31fada56 (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - ありがとうございます!SSも読ませてもらいますね! (2020年6月27日 12時) (レス) id: 3ab5c4a85e (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» TwitterにもSS挙げてるので良かったらご覧下さいませ。アドバイスは出来ないかもしれませんが、真白さんの小説も読ませていただきます♪ (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» コメントありがとうございます。電子で漫画読みながら、ちょこちょこ書いてるだけで決して上手くはないですよー。オンラインを知らないのもあってアドバイスはあまり出来ないかと…。 (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：御影ゆき | 作成日時：2020年5月23日 20時
