新しい朝 ページ42
『え、その写真』
「これあんたのポッケから落ちたのよ。てか酷い顔!チベットスナギツネに似てる」
いや、それは私も思った。
って、そうじゃなくて!
母が持ってるこの写真は私とDIOで巫山戯て取り合ったやつなのだ。
「これ画質古くない?今これが流行ってるの?」
『夢じゃなかった…』
「え?」
『本当の事だったんだ』
あぁ、手が熱い。
じわっと血が沸き立ったように、指先から胸まで熱が循環する。
「どうしたのいきなり」
ブツブツと独り言ちる私を母は横目で怪訝そうに見つめた。
私が何も言わないで立ちぼうけていると、興味が無くなったようにまた写真に目を移した。
「ねぇ、これ何か後ろに書いてあるわよ」
『え…』
写真の裏側にトントンと指先が示すところを見ると、そこには雑な字が英語で書かれてあった。
"I like you…… Just kidding"
解像度の悪いその言葉にグッと目の奥が熱くなる。
誰が書いたかなんてすぐに分かった。
『…ははっ、最後まで嫌な奴』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あれから1週間が経った。
学校に行って授業を受けて友達と帰る。
私は普通の高校生の日常に戻った。
最初こそは夏休み明けの始業式のような、変な気分だったがもう慣れた。
友達には「何かあんたメンタル強くなったね」と笑われた。
私には全然分からないけれど、そうなったのはきっとアイツのお陰。というかアイツのせい。
母にも自分の将来本当にやりたい事を話した。
勿論すごく反対された。
けれど本気で説得したら母も渋々納得してくれた。
今では結構応援してくれている。
「ニャー」
『おいで、ポチ』
私は足に擦り寄ってくる愛猫を抱き上げた。
長い真っ白な毛並みに赤い目はやっぱり何処かアイツと似てるところがあって。
もしかしたらって一瞬思ったがうちのポチはメスだし、それにとても温厚なので不毛な期待はあっさりと消えた。
私があっちの世界で出会ってきた人達は、悪役で冷酷で一般的に見たら倒されるべき"正義"だったのかもしれない。
けれど、それでも私はあの人達のことが好きだ。
ちょっと変わってて、不器用でも優しくて勇気を教えてくれた。
あの時の思い出はきっと忘れない。
ポチにキスを落として優しく床に下ろす。
そして私は勢いよくドアを開けた。
『いってきます』
鉄格子の窓から外を眺めた時、私が見えたのは泥の中に反射して輝く星でした。
fin
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俺☆ - やばいめっちゃ面白いのにめっちゃ感動してる。何だこれ。 (2023年1月5日 11時) (レス) @page50 id: b2c114123d (このIDを非表示/違反報告)
Earthあーす(プロフ) - あれなんか目がナイアガラの滝になってる (2023年1月4日 18時) (レス) @page43 id: 0fcf2cea39 (このIDを非表示/違反報告)
しらとめ(プロフ) - 面白いのになんとなく泣きそうになってきます (2022年11月28日 17時) (レス) @page35 id: 353a651934 (このIDを非表示/違反報告)
地獄の番人 - DIOの代わりに空条承太郎パイセンとくっついちゃいましょう!!面白かったです。続きを楽しみに待ってます!! (2022年11月28日 1時) (レス) @page33 id: d126292683 (このIDを非表示/違反報告)
ペトリ皿(プロフ) - やばい。展開も何もかもが面白すぎる。 (2022年11月27日 18時) (レス) @page32 id: cbc38767b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:光と慈雨 | 作者ホームページ:http:// http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時:2022年9月5日 23時