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ヴィランズによるアトモスフィアショーがもうすぐ幕を開ける。タワーオブテラー前のウォーターフロントパークの地面にはレッドカーペットが敷かれ、辺りは既に大勢の人だかりができていた。及川徹とその恋人は、演者たちのいる場所からはかなり遠く離れた場所にいた。それでもなお、人混みの最後列にいることに変わりはなく、なるほどこの人気は確かに異様だと及川徹は一人で納得する。Aは周りの目など何のその、長身な徹に肩車をしてもらい、手下たちの輝かしい姿をその眼に納めようとしていた。

「徹、あと45度くらい右肩上げて」
「そんなスキル俺にあると思う!?」
「バレーやってるんだから、肩くらい自由に操ってよ」

無茶を言われた上に、この人混みの中でショーが終わるまでの約20分間、ずっとこの体制でいなくてはならないのかと思うと、及川徹は非常に先が思いやられた。いくら普段から鍛えている彼でも、いくら華奢で抱える分には何ら苦にもならないAでも、彼にとってこの体制を維持し続けるのは、辛い。

「夢みたい……やっと彼らに会える」

うっとりするAに、及川徹はため息をついた。180センチ以上の長身を持つ彼も、この人だかりの中では手下の姿が目に入るどころか、女子たちの黄色い声しか耳に入らない。ディズニーのショーを観るときにはよくあることだが、混雑時にはショーの演者が見えず、止むを得ずショーを観ること自体断念することがある。しかしAは自分の恋人を盾にしてでもこのショーを楽しみたいようだ。

「徹、手下たちが来たよ!」

弾んだAの声を聞いて、できればそれに共感するなりなんなりしてやりたい。しかし状況が状況なため、「そっかー」と適当に相槌を打って徹はあくまで肩車に専念する。未だAの前でしたことがないような素っ気ない返事をしたが、Aは気にする様子もなく「ダルちゃーん! ワタシィ!」とかなんとか叫んでる。

この数分で及川徹は理解した。Aは沼にハマると人格が豹変するのだ、と。

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作者名:ネモフィラ | 作成日時:2016年8月28日 9時

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