8号、ココさんに"もっと"愛されたい

54 〈九井side〉 ページ16

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事件があってからだいぶ経つというのに、事務所の前はサツと報道陣に囲まれていてとても近寄れそうになかった






香水の瓶が落ちていたところまで見に行ったけれど、もう既に回収されたのか、何もない







向かっているタクシーの中でもう一度ニュースを見たけれど、亡くなった人の身元は確認中だと言っていた








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あいつが死んだら、誰に連絡が行くのだろうか





家族か。そもそも家族はいるのか




堅苦しい極道から拾ってきた女だけど、悪事に手を染めるまでは、どこで何をしていたのだろう






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「………俺、なんも知らねぇじゃん」






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あいつのこと、何一つ知らない





あいつは俺の事は、なんでも知ってるのに






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「同居人が帰ってこないんです！！同じ会社で働いてる子なんですけど、被害者の人って誰なんですか！！！？」






裏路地に身を隠していると、後ろから華奢な女が飛び出して行って警察に掴みかかる


落ち着いてください、と言われている奴らの会話に耳を済ました








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「……レディーススーツを着ている方でした。先程荷物を確認させていただいて、おそらく道路を挟んだ向こうにある電力会社の○○さんかと…………」









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聞き馴染みのない言葉がつらつらと警察の口から語られる






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Aという言葉は聞こえてこなかった








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「そんな……やっちゃんが……」

と、雨の中その女は地面に座り込んだ








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8号(アイツ)じゃ、なかった







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そう認識した途端に、ざーざーとうるさい雨音が脳に響いてくる








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その女と同じように、裏路地でその場に蹲った







冷たい雨粒と一緒に、熱い滴が頬を伝っていく







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衣服が肌に張り付いて、凍えるように寒い





8号のスマホは、豪雨のせいで動かなくなってしまった

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