居候がおりまして。ver.3【白膠木簓】

△Day.41 ページ7

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────どうするもこうするも。

簓、テメェは諦められんのかよ。





「あほ。諦められんから聞いたんや………」





からん。

喫茶店で一人ふけているとクリームソーダの中の氷が音を立てる。

おかしい。いつもならこの鮮やかな緑を見て心が躍るのに、口をつける気すら起きない。





「ほら、あーん」
「んー！美味しいっ」




「…………、」





あかん。知らんカップルのいちゃいちゃすら苛立ってしゃーないわ。見えんとこに移動したい。


………俺やってあのまま上手くやっとれば、今頃Aちゃんとあんなことやこんなこと。





「はあ………」





(…こんなこと考えたってどうにもならへんわ)





昨日の左馬刻の言葉に頷くことが出来なかった自分を思い出す。恋煩いなんて可愛く表現してみたが、もはやこれは不治の病や。


特効薬は彼女ただ一人。代替えなどある筈がない。






「Aちゃん……」






忘れてない。忘れられない。


細い指、冷静な声、小柄な身体。

たまに頬を染めるきゅんとした瞬間も。


もう頭を抱えて何時間が経ったんだろう。
心なし始めより溶けて消えたアイスクリームが羨ましくなった。





夢ん中だけでも会えたらどれほど嬉しいか。





「俺のこと、まだ覚えてくれとるんやろか」





緑の海を濁す白い液体のよう。
いずれ紛れてしまう記憶でも、ほんの少しだけでええ。
彼女が全部忘れて笑えるならと思った自分が今じゃ憎いもんや。



すと、ポケットから取り出したそれ。





「なあ。俺を帰してくれたんは、ほんまにお前の力なんか？」





手の中の栞には未だ白い彼岸花が咲き誇る。


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