居候がおりまして。ver.2【白膠木簓】

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「大丈夫？荷物重くない？簓さんの腕折れない？」
「そんな非力そうに見えるん」


「…………………まあ」
「その間がガチすぎて傷ついたわ」




煙草を吸い終わり灰皿に捨てる。


だって見るからに華奢だし力仕事なんて想像つかないから。しかし予想は簡単に裏切られ、荷物は軽々と持ち上げられた。





「芸人も体力勝負やから鍛えとかなあかんねん」





意外。男らしいところもあるんだと見直してしまった。



彼の笹色の髪が風に揺れる。
青いスーツに映えるそれが綺麗で、




瞬きをしたら霞むように彼の姿が、






「ほな帰ろか」


「──────…っ、待って！！」


「！？」






反射的に掴んだ手、私と彼の視線がかち合う。

は、と小さな呼吸。手の中に細い指。

細いけれどしっかりした実体。





「あ、あれ…？」





今、私は何を見た？


一瞬だけど簓さんの身体が透けたような気が。

まるで空に溶けてしまうようにゆるりと姿が霞んで、そのまま消えてしまうんじゃないかって。





(気のせいだった…？)





私が唾を呑んで唖然としていると、簓さんが口を開いた。






「あ、う、え、と…！

そ、そない見られたら、流石に簓さんでも恥ずい、んやけど…！」






空いた掌で顔を隠して絞り出すように声を出す。
隙間から見える肌がほんのり赤みを帯びていた。


しまった、こんなことするつもりは。




「ごめん！私、」


「！ま、まって離したらあかん！！！」




え？

動かした腕は彼の言葉で凍りついたように固まる。






「Aちゃんがええなら、


そんまま、もうちょっとだけ、繋いどきたい…っ」






どくん。まただ、また全身の血液が一気に駆け巡って私の身体を沸騰させる。

彼の余裕なく懇願する顔に呼吸も忘れた。





───何でも終わりは突然。だから大事な人の手は離しちゃ駄目。





ああ、誰に言われたんだっけ。この言葉。





「…………ずるい」
「Aちゃん…？」



「簓さんがそんなこと言うなんて狡い。


私も、離したくなくなっちゃったらどうするの」





それは困るでしょ？と無理に笑って見せれば、彼はその細い目を少し見開いた。





────A、内緒よ。この世界はもう一つあるの。





▼脈打つ心臓


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