居候がおりまして。【白膠木簓】

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「そうだ！話したかったのはお父さんの話じゃないのよ」




話し始めたのはお母さんじゃん、と思いつつ何の話と聞いてみる。なんとなく予想はつくけど…




「白石さんとこの息子さん！今度結婚するんだって！！」


「……知ってる」
「あら。直接聞いたの？」
「まあそんなとこ」




それは先日会った幼馴染の話だった。

娘なんだからお母さんが話したいことなんて手に取るように分かるよ。で、次はあの話しでしょ？





「まったく、アンタも早く結婚しなさいよ」


「……………はあ、ほっといてって」





これこれ。この一年くらいずっと同じ話をされている。それはもうウンザリする程に。思わず壁に背をついて頭を抱えた。




「彼氏は？いい人もいないの？」
「…居たら苦労しないよ。絶賛募集中」


「そんなこと言ってる間に気がついたら30になるわよ」
「分かってるよもう」




付き合ってた男に浮気されましたなんて、間違っても言えない。それに彼氏が居てもひた隠しにしてきた私は彼女の中ではずっと独り身だ。





「それならお母さんがお見合い相手を、」
「え！？やめてよ今時！絶対行かないからね！？」


「お母さん心配してるのよ？一人娘が生涯独身なんて…」
「大丈夫だって！心配しなくても何とかするから！
はい！この話は終わり！」





まだ話を続ける母に対し、もう切るからね！と怒鳴りながら無理矢理電話を切ろうとした。






ガチャ



「なあAちゃん。冷蔵庫のソースもうないねんけど」



「へ？」

「あら？」






頭の上から降ってきたその声が母の耳に届かない筈がない。





「あ、えっと…！」

「新しいのどこやったっけ？キッチンの下？」



「やだ！ちゃんと彼氏いるじゃない！」
「違っ…！この人は…！！」
「ソース無いなんてあり得へんわ。あ！たこ焼き焦げてまう！」


「もう今度連れてきなさいよ！そうだ明日休みでしょ！たまには帰ってきなさい！」
「ソースなら棚下…って、は！？そんな急に…！」


「それなら明日待ってるから。ふふっ、おやすみ」
「ちょっと…あれ！？もしもし！？お母さん！？」





ツーツーツー。あまりに無機質な電子音が現実を突きつける。


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