あたしの騎士は吸血鬼でした。 (ページ8)

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吸血鬼の迷いページ8

りんねside
帰りたくないの。

これは本当にあたしの本心なの？

本当は、“帰れない”だけなのかな？

そう。

あたしは帰れないの。

帰り道がわからないの、
　
そんなこと、あたし、言いたくないよ…

あたしはなんでも完璧な子でいなきゃいけないの。

吸血鬼のあたしは、両親にもなら迷惑をかけていた

“吸血鬼の子育ててるの？”

父が、知らない偉そうな人にくすくす笑われていた

あたしを産んだ、吸血鬼の母は

あたしの記憶の中で、いつも悲しそうだった

“ごめんね、吸血鬼で。”

笑顔の記憶はあまりない

だからあたしは、これ以上、迷惑をかけないように

“完璧な子”になりたかった。

どうして逃げてしまったの。

また、迷惑をかけてしまうよ。

わかっている。

今すぐにでも、帰らなければいけないの。

今すぐ森からぬけて走り出して。

そうすれば、まだ"完璧な子"に戻れるはず。

今なら間に合うの。

だけどこれ以上は手遅れ。

今夜のパーティーに遅れたら、あたしは…

あたしは、どうなるんだろう。

誰にも反抗しないで、

言われた通りにこなしてきて、

楽しくなんてなかったけど、

いつもそうして過ごせてきた。

今さら裏切ったあたしって何?

そう。

答えは…

裏切りもの。

そんなあたしと一緒にいてほしかっただけ。

迷惑だったらごめんなさい。

あなたといるのが、楽しいの。

吸血鬼に会えたからかな。

もっと早くから、出会いたかったな。

お屋敷にいてくれたら、逃げ出したりなんて、

しなかったよ。

吸血鬼ひとりぼっち、っていう状況から逃げたかったの。

あなたにあえて嬉しい。

名前も知らない、優しい吸血鬼さん。