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配達二三:お兄さん、ナイフを刺す ページ29










太宰と有島はチェスに興じていた。

有島は楽しそうに笑っている。
太宰はひたすら、盤面を見ていた。


現在、有利な状況にいるのは太宰だった。


もしかしたら、勝てるかもしれないと思った太宰だが、目の前に座る有島を見て、そんな考えは砕け散った。


有島は、笑っていた。


楽しそうに微笑んでいた。


只、それだけ。それだけだが、太宰を不安にさせるには十分だった。


余裕のある笑み。

もしかすると、自分の知らぬところでミスをしているのではないか、何か勝算があるのではないか、そんな考えがぐるぐると回り、そして、未だ考えが纏まらないまま、駒を置いた。





「あっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」



「あーあ、残念、治くん。悪手を打ってしまったね。駄目だよ、考えの纏まらないまま、駒を置いたら」



「っ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅」



「君は私の笑顔に惑わされてしまったんだね。駄目だよ、治くん。何度も云っているだろう? 心は常に冷静を保てと。動揺してちゃ、君の頭脳は発揮されない」




有島は笑みを崩さぬまま、云った。


「Checkmate」



「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅又た、負けた」



悔しそうに呟く太宰に有島は笑いかける。



「治くん、君に良いことを教えてあげよう」



「良いこと?」



有島は立ち上がり、太宰の傍へと行く。

そして、自身の胸元に忍ばせていた折り畳みのナイフを取り出し─────


「!?」



太宰の顔面すれすれの処に突き刺した。笑顔のまま。その笑顔が太宰の恐怖を加速させる。
長椅子にナイフを刺したまま、有島は太宰の頬をゆっくりと撫でる。


紫の瞳は太宰を捕らえて離さない。





「怖かった? 怖かったよねえ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。でも、これが私でなかったなら怖がることはなかった筈だ。何故、私だと怖いのだろうか? 判るかな?」


「先生が⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅笑っている、から」



「だいせいかーい! 今のこの状況での笑顔は恐怖を抱かせるものでしかない。治くん。君はナイフ自体は怖くなかったろう? だって君は死にたがりだからね。だから君は私の笑顔に怯えたんだ」

配達二四:お兄さん、弟子に闇を見せる→←配達二二:お兄さん、捕虜室の聖女に話しかける



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もこ(プロフ) - 初コメ失礼します!私男主の愛され大好物なので嬉しいです!文ストのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (5月22日 13時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
水耶(プロフ) - 北森くん出てきてくれてめっちゃ嬉しかった!隼ってでてもしかしてって思ったけど、、灯さん天才すぎます!感謝しかない! (2023年1月17日 15時) (レス) @page20 id: 4c6b81a587 (このIDを非表示/違反報告)
野良神@アホの子症候群(プロフ) - 一部完結おめでとうございます! (2019年2月16日 15時) (レス) id: 98ee09b097 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - ありしまま……………好き。一部完結おめでとう! (2019年2月16日 15時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - あああああ愛してるありしまんまみーや……今日の学校のクソさが全て洗い流された好き…… (2019年2月16日 13時) (レス) id: c18a6b747d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nyam83542/  
作成日時:2019年2月4日 21時

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