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第百二十一訓 ページ27

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料理を教えてくれたのも、私が今ここでみんなと一緒にいられるのも、全部彼女のおかげなのだ。

彼女には感謝しても仕切れない。恩返しだって、まだ出来ていない。


私の言葉に答えるように、ミツバ姉が手を伸ばし私の頰に触れる。細くて綺麗な手。それをギュッと包み込むようにして握り締める。



ミツバ「…私も…Aちゃんのことが大好きよ…これからも、ずっと……妹が出来たみたいで可愛くて…強くて、優しい貴方たちが大好きで…」



柔らかな声。か細いけれど、温かい。
でも、その声を聞くと酷く胸が痛む。



ミツバ「わき見もしないで前だけ見て…歩いていく…その背中を見るのが、本当に好きだった……だから、私の代わりに…そーちゃんのこと、お願い…」



彼女の細い手を握るのに思わず力が入る。今の私はどんな顔をしているのだろう。泣いてはないけれど、その分を支払うように口から出る声は震えていた。

察されたくなくて、声が震えないよう気を付けていたのに。弱いな、私は。



「…なんで、そんなこと言うの……私、まだミツバ姉に恩返し出来てないのに、代わりになんて言わないで…いなくなるみたいなこと、言わないで…」



落ち着かず段々小さくなる私の声に「Aちゃん」と声をかけてくれるけど、その次に発せられる言葉は聞きたくない。



「…やめて、お願いっ……いかないで、ミツバ(・・・)…」



これ以上情けない顔を見せたくなくて、手に顔を近づけて隠す。子供みたいに駄々をこねているのは分かってる。でも、仕様がないじゃないか。



「…置いてかないで………っ、」



置いていかれるのは、もう嫌なのだ。

分かってる、これはただの我儘だ。先に置いていったのは私達だってことも、私が願ったところで意味がないことも全部、全部分かってる。

でも、それでも、ただ彼女に生きて欲しくて、



ミツバ「…置いていったりなんかしないわ…私ずっと見てたもの…これからも変わらないわ…」



「…私が嘘つくと思う?」と、儚く笑う彼女を見て首を横に振る。ゆっくり顔を上げると、綺麗な茶色の瞳と目が合った。


__あぁ、この人は本当に、



「…私、約束事は死んでも守るって決めてるの」



いつだったか、彼女が好きだと言ってくれたあの笑顔を見せ、込み上げてくる物を必死に堪える。



「だから大丈夫だよ…ありがとう、ミツバ姉」



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第百二十二訓 ミツバ篇 終→←第百二十訓



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設定タグ:銀魂 , 原作沿い , 逆ハー   
作品ジャンル:アニメ
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クローバー - タイトルの第が大になっていますよ (2022年10月23日 19時) (レス) @page25 id: f7867713b9 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - ミクさん» 洒落にならない数々のミス申し訳ありません。一通り目を通し修正してきました。ココがまだおかしい、という箇所がありましたらお手数ですがまた教えて頂けると幸いです。すみません。 (2021年8月5日 20時) (レス) id: d757d08cdf (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 時々、坂田「銀さんたぶらかして」みたいな感じになって最初の「の前の名前が違っていることがあります (2021年8月5日 13時) (レス) id: c0f1b840e0 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - MEIさん» ありがとうございます!テスト、なんとか終わりました!!テストお疲れ様です!2週間以上も前ですけど(笑) (2019年6月7日 7時) (レス) id: bb6b3491df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊ひな | 作成日時:2019年5月12日 12時

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