28. 過去編 ーエレメントー ページ29
観客の大きな歓声は、fineがステージにあがった合図だった。
私はfineの最後のステージを舞台袖から見守っていた。
ーこの後は、どうなるんですか?ー
つむぎくんの言葉が、頭の中で反響していた。
この後?
この後なんてないじゃない。
fineは今日で終わりを迎える。
私はまた、求められる誰かの元でプロデュースをすればいい。
いままでだって、ずっとそうやってきたんだ。
それでいいじゃないか。
それで…………
「なんで……」
バインダーを抱える両手に力が入る。
なんで、そんなに辛そうな顔をしてるの?
そんな顔で笑わないでよ。
そんな声で歌わないで。
美しく残酷に響き渡る音楽は、彼らを乗せてその終焉へと向かっていく。
踊りを歌をやめる事は許されない。
正に完璧な世界。
美しく煌めくペンライトは、彼らの世界を彩っていく。
それなのに、当の本人たちは何一つ幸せな笑みを浮かべていなかった。
いや、一度も
そんな笑顔なんて、見たことは無かった。
ああ、そうか。
私がめちゃくちゃにしたんだ。
英智くんやfineのみんなが、笑顔で立てるはずだったステージを
これから先のfineの未来を
私は、全て奪ったんだ。
自分の欲望を満たすことばかりに彼らを消費した。
彼らだけじゃない。
宗くんも朔間さんも渉も、私が傷つけて裏切ったんだ。
自分の居場所を得るために、たくさんの人の居場所を奪ったんだ。
この後…
この後fineは解散し、英智くんは夢ノ咲学院を統治する。
頂点に君臨するんだ。
たった一席だけの玉座に…
私を一人にした父や母のことを恨んでいたのに、私は今英智くんを一人にさせようとしているのか…
胸が痛い
私は大罪を犯してしまったんた。
「ごめ……………!」
泣いたって意味は無い
謝ったって変わらない
蹲っても何にも成さない
fineの勝利を告げる歓声が頭の中に響いていく。
これで英智くんは独りになるんだ。
ああ、せめて
せめてあなただけは
あの日の私にならないで…
「英智!!!!!!!」
金星杯の幕が降りた後、英智は倒れた。
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chika(プロフ) - もち明太さん» コメントありがとうございます!渉との関係性がとても重要なのでそう言って頂けてとても嬉しいです…!更新頑張ります!見守っていてくださると嬉しいです (2021年6月9日 0時) (レス) id: f3305d13ec (このIDを非表示/違反報告)
もち明太(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。好きすぎてびっくりしました…渉が…渉が好みすぎて……。ご無理のない範囲で更新頑張ってください(*^^*)応援しております (2021年6月7日 23時) (レス) id: c849447eb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chika | 作成日時:2020年10月24日 1時