19.あんずside ページ20
生徒会室でTrickstarは解散を言い渡され、fineのパフォーマンスを見た後、メンバーの4人は確実にすれ違い始めた。
みんなはバラバラになってしまい、最後にはTrickstarのメンバーは明星くんひとりになってしまっていた。
私はTrickstarのプロデューサーとして何をすべきなのだろう。
まだ、できることが少ない私にとって何が最善か見いだせないでいた。
こうしているうちにもDDDの開催日は目の前まで迫ってきている。
西日が窓から差し込み、幻想的な景色をみせる廊下は一日の終わりを告げる悪魔のように見えた。
それでも綺麗なその光に吸い寄せられ、私は現実世界から逃げるように窓の向こう側を見つめていた。
「あんずちゃん」
不意に後ろから声をかけられた。
女の人の声なんてこの学院に一人しかいない。
そう思いながら私は声のする方へ振り返った。
「先輩…」
「英智の意地悪な策略でTrickstarはバラバラにされちゃった?」
「はい…」
意地悪な聞き方をする先輩に戸惑ったが、流されるままに頷くことしか出来なかった。
何しに来たんだろうと考えていると先輩は小さく息を吸って私に言った。
「あなたがプロデューサーなら絶対にアイドルを独りにしないで」
「本当にバラバラになってしまったらもう二度と元には戻らない」
放たれた言葉は予想もしないものだった。
でも、先輩の表情は酷く真剣で私は視線を外せなかった。
「どうしてですか…
先輩は…fineの…」
絞り出した私の言葉に先輩は眉を下げて微笑んだ。
「忠告、かな…
私は愚か者だったけど、あなたにはそうなって欲しくないから」
先輩はそう言うと、私の返答を聞かずそのまま去っていった。
先輩の言葉でやっと私は明星くんをひとりにしてしまっていることに気づいた。
メンバーがバラバラになってしまった今、彼のそばにいてあげられるのはプロデューサーの私しかいない。
そう思った途端、私の中の黒い霧は晴れ、夕暮色に染まった廊下を走り抜けた。
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chika(プロフ) - もち明太さん» コメントありがとうございます!渉との関係性がとても重要なのでそう言って頂けてとても嬉しいです…!更新頑張ります!見守っていてくださると嬉しいです (2021年6月9日 0時) (レス) id: f3305d13ec (このIDを非表示/違反報告)
もち明太(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。好きすぎてびっくりしました…渉が…渉が好みすぎて……。ご無理のない範囲で更新頑張ってください(*^^*)応援しております (2021年6月7日 23時) (レス) id: c849447eb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chika | 作成日時:2020年10月24日 1時