ヨコハマ食味短報 ページ18
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それは心地よい風の吹く、長期休暇の前の日のことだった。下手に外出すると家の前でうろうろする不審者を生んでしまう私は、特に大きな予定はなかった。
私はカーペットの上で、緩い部屋着でごろごろしていた。手元の携帯端末でSNSをチェックしていると、電話がかかってきた。思わず起き上がって居住まいを正す。
「……もしもし?宮垣です」
『Aチャン、こんばんはー。突然だけど、明日からの長期休暇はどんなご予定かな?』
「え?特に何もないですよ」
『なら、丁度いい。一緒にヨコハマへ行かないかい?』
「ヨコハマ……ディビションですか?いったい何しに……」
『雑誌の取材でネ。横浜の中華街で食べ歩きをするんだけど、今回は少し趣向を変えることになっていて……。うちの雑誌、読んでるだろう?』
そう言われて、毎月、渡していただいている雑誌を見た。自分の後ろのラックにはバックナンバーが並べられている。正直、中央区専門誌なので女の子向けのキャピキャピした雰囲気の雑誌なので苦手だ。だが他のディビジョンにまで話題がとぶ美由紀さんの食レポコラムは気に入っているので、引っ越した時から定期購読させてもらっている。
「先月のイケブクロディビションの駄菓子屋さん、面白い記事でしたね」
『そうでしょう。そうでしょう。……で、もし長期休暇に予定がないのならばヨコハマで食べ歩きしないかい?写真も食べ物が載るだけだし、おしゃれする必要もなし!バイト代も出そう!』
電話口で美由紀さんにそう言われ、思わず腰を浮かせた。ヨコハマは治安が悪そうなイメージがあるから、あまり足を運びたくない。でもヨコハマの、それも中華街なんて……。
「とっても楽しみです!行かせていただきます」
『ありがとう。じゃ、明日の10時に駅の南口に集合ね。1泊2日分の旅行の準備をしてきてね』
「わかりました!1泊2日ですね」
私はお休みなさい、と言って電話を切った。年甲斐もなく、わくわくしてきた。まるで修学旅行へ行く前日の気分だ。うずうずして携帯を握り締めていると、今度はメッセージの通知が来た。誰からだろう……?さっき、美由紀さんがどこを回るのか地図を送るって言っていたから、それかな?そう思いながら通知のマークをタップした。
「げ……」
思わず声が漏れた。普通、三次元の推しからメッセージがくるなんてシチュエーション、喜ぶべきなのだろう。だが、嫌も嫌もすきのうちというやつか。
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一期Love(プロフ) - 簓推しなのでこの小説見つけてテンション上がっちゃいました笑私関西人なんですけど関西弁もあんまり違和感ないしキャラも上手く表現?されててスゴイなー!って思いました!これからも頑張ってください。更新待ってマス!! (2019年10月21日 21時) (レス) id: 2345a9075e (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - レインさん» 誤植の指摘、ありがとうございます。すぐに確認させていただきますね。 (2019年10月10日 14時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 上層じゃなくて女装じゃないですか?間違ってたらすみません! (2019年10月9日 16時) (レス) id: a7f544d6f5 (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - リつきさん» 有難うございます。楽しんでいただけて幸いです。キュンキュン、してますかね?? (2019年10月5日 21時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
リつき - とても良かったです!めっちゃキュンキュンしました!!!素敵な作品ありがとうございます!続き楽しみにしてます♪ (2019年10月5日 20時) (レス) id: 4bdd39adda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高炉 | 作成日時:2019年10月2日 0時