四話 ページ5
『ひっぐ…ぐす…っ』
屋敷の自室、暖かい日差しに照らされたふわふわの布団の上で丸まり、涙をこぼす。
どうしようもないほどに溜まっていく自己嫌悪の感情が抑えきれない。
なんでこんなに醜いんだ。なんでこんなにだらしないんだ。
不甲斐ない。申し訳ない。惨めだ。
溢れ出す嫌悪の刃は自分に何度も向いて、貫かれる。
それでもこうして泣いて、自分で涙を拭って、欲しい言葉を心の中で囁く。
誰も、多分頼んだって馬鹿にされるだけだから。
だから自分を愛することはできなくても、慰めなくてはいけない。
気持ち悪くても、こうじゃなきゃ自分を保てないから。
自分を可哀想としてみないと、自分をうまく好きになれないから。
『…汚い、なぁ』
誰かより優しいわけでも、優れているわけでもない。
むしろ人より劣っていて出遅れる。
鬼だって、首を満足に切れたりしない。
ほぼラッキーで駆け上がったような鬼狩り、柱の地位。
自分もみんなも、満足がいくような実力も記録も出せていない。
その度、自分の無力さにどうしようもなく、涙を流すことしかできなくなった。
優しく自分を抱きしめ、何度も撫でてやる。
もっと強く、惨めにはなれないから。
もう二度と、失わないように。守るために、強くならなければならないから。
しばらく、涙が止まりぼぅっとその場を見つめる時間となった。
疲れ切った瞳は少し痛い。視界も、いつもよりぼやけているように思える。
「客人ガ参ラレマシタ」
『ん。あぁ…そう、かい…ありがとう』
魂が抜けた人形のように濡れた枕を見つめていれば、羽音を立ててカラスが隣へと降りてくる。
どうやら客人が来たようで、それを知らせに来てくれたようだ。
こんな時に一体なんだろう。
刀…はまだ壊してないし、鬼ならまだ昼間だしなんなら鴉が伝えてくるはず。
不思議な気持ちをいっぱい、いっぱい胸に詰め込んで屋敷の門を開いた。
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八雲(プロフ) - とても続きが気になります!!更新楽しみに待ってますね! (2019年5月27日 21時) (レス) id: ee1ccd9f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年5月5日 14時