Happy Everyday 2nd.

尾を引くby阪神 ページ22

突如として行われた、ウィニングボール贈呈式を終えたA。
荷物を取りに一度控室に戻り、先方の広報室へ行き、明日の確認と終わりの挨拶をして、選手団のバスに向かう。
出入口から控室、グラウンドまでの道のり、化粧室の位置まで、ばっちり記憶した。
あとの2日間は、ハプニングさえなければ乗り切れる。



◆◇◆


仕事終わりの解放感により、鼻歌と軽いステップを踏んでいると、角で巨人選手と鉢合わせた。

長「あ、A」

途端に、Aの表情が変化する。

「うわー…」
長「いくらなんでも、露骨すぎるだろ」
「すいません。すぐに表情に出ちゃうんで」

反省の色を全く見せないAと、負けた気持ちと無愛想なAに少し苛立つ巨人選手。

坂「あのさぁ、態度がなってへんくない？」

よって、空気が悪い方向に流れていく。
巨人選手が距離を狭め始め、Aは後ずさり。

『ちょっとヤバいやん、この展開…』

さすがにAも、この空気は読めている。
いかにして、この状況を乗り切るのか。
それを考えていたら、目の前に壁が現れた。

能「八つ当たり、やめてくれへん？」
鳥「話があるなら、俺が聞いてやる」
西「Aちゃん、行くでー」

壁が誰なのか判断できたと同時に、西岡に連れられてAはそこを離れた。



◆◇◆



バスに乗れば、あの空気がウソのようになる。

「あ、藤浪くん。サインちょーだい！」
藤「もちろん！」
今「Aちゃん、俺のサインはー？」
「ホームラン打ったら、もらいましょうかね」
今「マジで？！ムズいよ！」
大「一生無理やな」

笑いが絶えず、和気あいあいとした空気。



そんな中、鳥谷と能見が入ってきた。
これで全員が揃い、バスが発進する。

「能見さん、鳥谷さん。どーなりました？」

最も後ろにいたAは身を乗り出して、中ほどに座った2人に問いかけた。

能「大丈夫や。話したら、分かってくれたから」

能見は、振り向いて答えてくれる。
一方、鳥谷は何にも話さないし、振り向いてもくれない。

「え、鳥た…」
江「姐さんっ！」

隣の江越が、Aの口を塞いだ。

江「しっ！」
「もごもご？(そうなの？)」
江「どう見ても悪いですから、この話題はスルーしてください。いいですね？」

若虎に諌められて、さらに周囲から何度も念押しされて、ようやくAの口元が解放される。

「じゃあ、黙っときます」

こうして周囲は、鳥谷の機嫌をこれ以上損ねることなく、1日が終わることに胸を撫で下ろした。

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