Happy Everyday 2nd.

ウイニングボールby私 ページ21

勝った瞬間、私は席を立った。
はやる気持ちを抑えながら、阪神のダッグアウト裏へと向かう。



いつものように廊下の端に待機してても、皆さんは帰ってこない。
時間的にも、もう引き上げてもいいんやけど…。
そう思ってたら、真っ先に監督がやってきた。
勝ったから、めっちゃニコニコしてる。

監「早よ、ダッグアウトに行って来い」
「選手じゃないんで、私はいつも通り…」
監「ええから行って来い。特別に許可したる」

監督に背中を押された挙句、矢野さん・片岡さん・濱中さんに順々に押されて…。


――どすっ――


「うわぁっ！」

平田さんのトドメの一発によって、私はダッグアウトに突入。
でも、階段に躓いて前に倒れかけた…ところを、隼太さんに抱えられて助かった。

隼「危ない。大丈夫？」
「えぇ…」
隼「早く座った方がいいよ」

隼太さんに言われて、ようやく足を踏み入れる。
うつむいてた顔を上げると、皆さんが座ってた。

横「姐さん、遅いです！」
「ごめんね」

皆さんと勝利のハイタッチして、ダッグアウトを1周する。

上「良かったね」
「ホンマですよー。肩身の狭い思いをしなくて済みました」
上「ココに座ったら？晋太郎のインタビュー、始まるから…」

誘われたところに座ろうとしたら、

能「こっちにおいで」

強制的に能見さんの隣に座らされた。

「えぇ…え…」

とりあえず、上本さん、ごめんなさい！
ジェスチャーで手を合わせると、苦笑いして答えてくれた。

西「篤史さん、強引やなぁ」
能「だって、隣、空いてるもん」
西「子どもですね」
能「お前には言われたない」

3列目のちょっと真ん中よりに座って、藤浪くんのインタビューを聞く。
よどみないインタビューや。
よー、次々と言葉が出てくるわ。



写真撮影の終わった藤浪くんが帰ってきた。
皆さんが立ち上がって、再び勝利のハイタッチでお出迎え。

藤「勝ちましたよ」
「うん。おめでと」

私は、握手してお祝いする。

鳥「引き上げるぞー」

皆さんが引き揚げていくから、私も藤浪くんと一緒にそこを出た。

藤「はい、コレ」

すぐ横のロッカールームの前で、藤浪くんからウィニングボールを渡される。

「ん？何？」
藤「あげます」
「えぇ？！コレ、大事なヤツでしょ？！」
藤「また作ればいいんで。今日のはあげます、受け取ってください」

ボールが、ぐいぐい押されてくる。
返納はできないみたい。

「では、ありがたく頂戴つかまつります」

私は、両手でそれを受け取った。

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